君に失恋したから髪を染めた【羽風薫】 (ページ6)

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5話ページ6

5話
sideA

『Aちゃんと話してるとこ見られたら色々まずいからさ』

薫は私を避けている。
それがわかった会話だった。
この一文を聞いて私は、苦しくなった。
泣きたくなってしまった。

だから私は1人になれそうな所に行こうとした。
誰にも見つかりたくない。
こんな顔をしている所なんて。

桃李「A？」
A「！」

名前を呼ばれたため反射的にそっちを向いてしまった。

桃李「A…？なんで、泣いてるの？」
A「え、違う。泣いてないよ」
桃李「嘘言わないでよ。僕、見たんだから」

桃李に腕を掴まれる。
私の前に立って私の顔を覗き込んでくる。

桃李「やっぱり泣いてる。…どうしたの？」

桃李がハンカチを差し出してきた。
だけど、私は受け取れなかった。
涙がとめどなく流れてきたから。

桃李「…無理に話さなくていいよー。Aが泣くなんてよっぽどのことなんだね」

私はその場に座り込んでしまった。
そんな私を桃李は優しく撫でた。

A「わ、私っ、」
桃李「なーに？」
A「や、やっぱり…失恋っ…してるよ…」

桃李には全部話したことがある。
薫が幼なじみで、薫が大切で、薫が大好きだってことは。
だから婚約の話は桃李が拒否してたこともあって進むことは無かった。
私から了承した時、桃李は失恋するはずなんてないと怒ると同時に話を聞いてくれた。
私より年下なのに…しっかりとしたいい子だと思った。

桃李「…Aが失恋してるはずないよ…だってあの人とAはずっと仲良しだったじゃん…」
A「でもっ…」

先程言われた言葉をそのまま伝えた。
それを聞いた桃李は怒った。

桃李「はぁ？？！なんでそんなこと言うわけ？！ずっと一緒にいた人に対して言う言葉じゃないよね？！そんなやつと一緒にいるくらいなら僕といて！僕の方がAを大切にできるもん！」
A「…嬉しいこと、言ってくれるね」
桃李「当然だよ！Aのことだーいすきだから！」

ぎゅーっと抱きついてくる桃李を私も抱きしめ返す。
本当にいい子に出会ったなぁと思う。

A「私も桃李が好きだよ」
桃李「えへへ！嬉しいっ！」