君に失恋したから髪を染めた【羽風薫】 (ページ27)

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26話ページ27

sideA

父から姫宮との婚約は解消されたという話を聞いた。
全部、桃李が理由を考えてくれたらしい。
もちろん、英智は大体のことを察してくれていたらしい。その上で何も言われなかった。
だからこそ、何故か少しだけ申し訳ない気持ちになってしまった。
私の甘さが誰かを傷つけてしまったのだから。

弓弦「そこまで気になさらずとも大丈夫でしょう」

たまたま廊下で会った弓弦と話をした。

弓弦「ぼっちゃまは私共が思っている以上にしっかりと物事を考えているご様子。…下手に近づく方がぼっちゃまを傷つけてしまわれるでしょう」
A「…そう、だよね」
弓弦「…A様、私は別にぼっちゃまとの婚約を破棄したことを怒っていませんよ？」
A「……」
弓弦「私の目から見ても、貴方様は一途に相手を想っていましたから。…仕方の無いことです。ぼっちゃまには酷ですが、これもいい経験かと」
A「…私、桃李のことは大切に思ってたよ」
弓弦「分かっております。ですが、それは弟のように、でしょう？」
A「うん。…異性としてだなんて、考えたこと無かった」
弓弦「えぇ、そうでしょう。…ぼっちゃまとA様は本当の御姉弟のように過ごされていましたから」
A「やっぱり私は酷い女だよ」
弓弦「そんなことは…」

弓弦が言葉を詰まらせた。
ダメだ、やっぱり困らせる言動をしてしまう。

A「知らないフリより、気付かない方が残酷だと思うんだ」

そして、私は。桃李の優しさに甘えて自分の我儘を突き通そうとしてる。

A「いっそ、悪女であれば良かったよ」

私が弓弦に手を振り、その場を去ろうとすればすぐに腕を引っ張られた。

弓弦「ご自分のことを悪く言わないでくださいませ」

真剣な表情だ。

弓弦「貴方様がご自分を否定するということは貴方様を愛している方々まで否定すると言うことです。…それだけは、忘れないでください…」

腕は優しく離された。
きっと弓弦なりの励ましなのだろう。

A「ごめんね弓弦。ちょっとネガティブだったよ」
弓弦「いえ、お気になさらず…。ぼっちゃまも、私も、A様の幸せを願っておりますので」

私は弓弦に抱きついた。
あまりにも愛おしくて、嬉しかったから。

A「頑張るよ」
弓弦「はい」