【名探偵コナン】自宅にカチコミされるとか聞いてない【ギャグ/赤井秀一】

#492 ページ16

「こんばんは……初めまして。安室透です」


　紺のシャツに白のベストを身につけた「安室さん」が目の前に立っている。いつぞやのベルツリー急行で”バーボン”と名乗った時のような、不敵な笑みを浮かべていた。


「でも……初めましてじゃ、ありませんよね？」
「っ、」


　射抜いてくるような視線を感じ、自分の肩がつい跳ねる。


「……少し話をしたいんですが、中に入っても？」
「ええ。貴方一人なら」
「(ひ、ひとり？……あ、)」


　視線を辿った先には工藤邸の門──そこに人影が見える。
　一人や二人ではなく、全員がこちらを監視するような鋭い視線を注いでいる。私にとってみれば、何度も経験した覚えのある感覚だった。


「申し訳ありませんが……外で待たれてるお連れの方達はご遠慮願います。彼女が怯えるような事はしたくないので」
「……」


　目の前にサッと手が広げられた。一瞬眉根を寄せる安室さんはそれが気に食わないようだ。


「(えーと……いち、に、さんし……)」
「……ところでAさんは何を？」
「何ってカウントですよ。見ての通り」


　二人の間に漂い始めたおもた〜い空気は取り敢えず置いておいて、目を凝らしつつ門を覗いてみる。


「お茶淹れてこよっかなって思うんですけど、お連れさんの分いります？」
「おや？家にそんな数のティーカップありましたか」
「あの人数くらいなら足りますって。山ほどあるんですよ！お客様用の未開封のヤツ」
「ゴホンッ！気にしないでください、お茶も結構です！」


　あら断られちゃった。せっかく使い道のないティーセット使えるチャンスだったのに……いや正確にはさっさとこのおもた〜い空間から抜け出してあったか〜い紅茶でも飲みたいだけなんですがね。


「(あと早くマカデミーの続き見たいな……もう発表始まってるだろうし──)」
「彼らは外で待つのが好きなので。でも、貴方の返答や行動次第で……」


　──全員お邪魔する羽目になるかも知れませんけどね。


「(……いや怖……)」


　思考が一瞬逸れた隙を突いて出たあまりにもストレート過ぎる脅し文句に、私はどうか丸く収まるように祈りながら天を仰いだ。

──

　というわけでお客様一名をリビングにご案内。
　一旦私だけキッチンに逃げ……移動して、３人分のティーセットをトレーの上に用意する。リビングに戻って運び終えると──


「で、二人はどういう経緯でお付き合いを？」
「ハイ……？」


　全く予想だにしていなかった尋問が始まっていた。

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2023/06/11

気づいたら時間飛んでやがる

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