#347 ページ16
Aが返事をした瞬間、列車が外の光に包まれる。どうやらうんざりするほど続いていたトンネルはやっと抜けたらしい。
灰原の視界は一瞬真っ白になり、眩しさで思わず目を閉じる。
暫くして明瞭になった灰原の目の前には、射し込んだ日の光を浴びながら、いつも通り朗らかに微笑むAの姿があった。
「本当に貴女なのね……どうして、こんな所に……」
「え〜と今はちょっと詳しく言えないけど……哀ちゃんが寂しがってるんじゃないのかな！って思って会いに来たの」
「ちょっと、答えになってないんだけど」
「……えへへ」
理由も根拠も曖昧な返答をするA。
にも関わらず、その笑顔を見た事で心の奥底ではホッとしている自分がいる事が分かっていた。
「お隣、座っていいかな？」
「……ハァ、そのつもりで来たんでしょ。イヤなんて言わないわ」
「やった！」
窓側の端に所在無さげに座り込んでいた灰原の隣に、Aはそっと腰掛け、灰原の手を取った。
いつもの様に熱烈な愛を叫ぶのかと灰原は思ったが、彼女はただ静かに座っていた。
恐らく彼女は分かっているのだろう。自分がこの部屋に逃げ込んだ理由も、怯えていた訳も。
それでもただ傍に居てくれる存在がこれ程嬉しいものなのか、と灰原はAと出会ってから何度目になるか分からない喜びを、そっとかみ締めていた。
「……A」
「？」
「さっきは、大きな声を出して悪かったわね。誰だか分からなかったから……」
「いやいや、こっちこそごめん！ノックもせず入っちゃって……ビックリしたでしょ？」
「まあね。見た目も普段と違うから、一瞬本当に知らない人かと思ったわ」
「え゛」
Aはピシリと凍りついたが、嘘は言っていない。
白く光るノンホールピアスに、プロが施した様な上質な薄化粧。眩しく色彩を放つスカートに、同様の色を散りばめたネイル。
切れ込みが入っているため肩が少しだけ覗かせているのが少女らしくはあるが、どこぞの気に食わない眼鏡男を思い出させる黒いハイネックの上では、ピアスと同じ様に輝くシンプルなネックレスが彼女の胸元を煌めかせている。
隣に座って間近で見ている分、よりAという少女が美しく見えていた。
「……そんなに誰かわかんなかった……？？？」
「気になるなら自分で見て見なさい、ホラ」
灰原は自分の手鏡を取り出し、Aに差し出した。
(ありがとう！気になってたんだよねどれどれ……っっエ゛ッ！？誰ェ！？)
本日の名言！
そんな顔をするな…それとも俺の保証だけじゃ不安かな？《赤井秀一》
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さくら（ふぶきち）(プロフ) - りんさん» うれしいです。更新の糧をありがとうございます！ (2021年6月21日 21時) (
レス) id: a531cb8ac0 (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - とっても面白いです！更新頑張ってください！ (2021年6月21日 17時) (レス) id: 1d767c3347 (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - マナさん» ミリしらです。すみませんが、作品と無関係の話でしたらボードでお願い致します。 (2021年6月5日 12時) (レス) id: d9c18bb1e3 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - さくらさん» 作者さんこの作品とは違う話しになるけどイナズマイレブンはご存知でしょうか？？ (2021年6月5日 10時) (レス) id: 080dd1eb98 (このIDを非表示/違反報告)
さくら（ふぶきち）(プロフ) - 向日葵@sunflowerさん» ありがとうございます。イメログの方でこの作品の顔有り夢主絵をたくさん載せているのでそこから容姿など見ていただけると幸いです。文才は無いです。コメント頂けるだけでも感謝しかないのでとても嬉しいです！ (2021年6月2日 23時) (レス) id: a531cb8ac0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さくら
| 作成日時：2020年1月21日 1時
