Prolog ~名探偵コナン~

政略結婚【降谷零】 ページ31

『おかえりなさい、零さん』


｢あぁ。ただいま。シャワー浴びたらまた仕事に戻る。｣


零さんは返事は返してくれるけど笑顔も感情も何も無い、ただの挨拶。

これでも私達は結婚している。…しかし、そこに愛はない。

今どき珍しい、政略結婚をしたからだ。

警察庁警備局警備企画課__通称ゼロのエースの降谷零の上司と警察庁の割と上の方にいる私の父が決めた結婚だった。

一応お見合い的なものはあったものの、私達に拒否権なんてものはなかった。


最初はあぁ、かっこいい人だなとしか思っていなかった。でも、零さんの日本を想う心に、仕事に打ち込む姿に、零さんのことを少しづつ知る度に、全てに惹かれていった。


だから。たとえ政略結婚だったとしても零さんと結婚できることが嬉しかったし、幸せだと思った。

…でも、結局それは私からの一方通行な想いであって、決して交わることはない。


それに私は、婚姻届を提出する日に零さんにある宣言をされていた。

《俺たちの間に愛はない。これは政略結婚だ。もし君に好きな人が出来たらこれを提出してくれ。》

その言葉が私の頭からいつまでも離れなかった。

…まだ婚姻届も出していないのに離婚届の自分の欄を埋めて渡すなんて、なんて酷い人だろう。


そんなこんなで私たちの夫婦生活は始まった訳だが、やっぱり私が零さんに惹かれていく一方で、零さんの私に対する冷たさはずっと変わらない。



__私は、恋をしてはいけない人に恋をしてしまった。

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