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「腹が減っているのか?」
「あ?」
思わず声をかけてしまうと、ようやく私に気づいた彼は顔を上げた。
「お前に聞いている。腹が減っているのか。」
あんな目をしているのは、何かを求めている人間だけだ。
「まあ、大枠ではあっているかもな。」
3大欲求を満たせない人間は知らず知らずのうちに削り取られていく。
「俺がほしいのは、ただの安全な毎日だ。
…生きる意味が欲しい。」
ほうら。やっぱりそうだ。
「よし、一緒に行こう。名前は?」
「………メイ。」
随分と可愛らしい名前だ。
「よし。私はA。お前の生きる意味を一緒に探してやろう。」
随分とひどい言葉だった。
だがこれくらいしか言えることはない。
「別に俺は死にたい訳では無い。」
「そんなことはわかっているよ。」
だったらあんな目をする訳がない。
「私は生きるよ。どんなにつらくても。だからお前も生きろよ。
戦ってでも生きろ。逃げてでも生きろ。こっぴどく敗北してでも生きろ。何もかもうまくいくわけじゃない。ヒーローだって万能じゃない。現実はハードで、這いつくばるのは情けなくて、死ぬよりも苦しいことだってある。ときに友情は壊れ、愛は無力で、努力は報われるとは限らない。
それでも、生きろ。」
「なんのために?」
メイがため息混じりに答える。それはなかなかに魅力的なため息だった。
でもな、なんのために生きるかだって?
そんなの、そんなの、
「そんなこともわからないまま、死ぬんじゃない。」
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作者名:ユ━リィ | 作成日時:2022年11月19日 8時