水と菓子【meychan】 (ページ15)

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7-1 群れからはぐれた狼の鳴き声みたいページ15

Mey side

本当に良かったのだろうか、と今になって思う。

今は例の誘拐犯がいるというアジトから少し離れた場所でAと話している。子どもを救いたいという気持ちで軽率に判断してしまったが、Aはそれで良かったのだろうかとも思う。

「大丈夫。今回の依頼で私達は死なないよ。だから安心して。」

と言っていたが、旅人という仕事柄いつ死んでもおかしくない。さらに今回の相手は子どもを売りさばこうとするれっきとしたヤバいヤツなのである。多分死ぬリスクのほうが高い。「私は死にたくないだけだ」と何処かで行っていたが大丈夫なのだろうか。

けれどもなぜだろう。Aが大丈夫といっただけで自分は大丈夫だと思えてくる。Aには不思議なカリスマ性があった。

「さてメイ、今回の相手はどんな人間だと思う?」

これもお決まりの流れだ。彼女は何時でも、相手のイメージや人物像を描けという。もしかしたら死ぬかもしれないのに。

「言い方は良くないかもしれないけれど、典型的な社会不適合者って感じがする。」

そう、本当に言い方が悪い。それでは相手は救いようのない人間のように感じられてしまうかもしれない。本当にそうなのかもしれないけれど。

「困ったね、それだと私と同類じゃないか。情が湧いてしまう。」

「社会不適合者というのはね、何かが『出来ない』人間や、何かを『しようとしない』人間じゃないんだ。