帝国戦-3 ページ23
私は記憶の洪水をやり過ごすために、ずっと蹲っていた。やがて、足音が聞こえて慌てて立ち上がる。
顔を触る。うん、大丈夫。笑顔は浮かべられる。
顔を出したのは春奈ちゃんだった。良かった、兄さんならバレていたかもしれない。私はにこりと笑った。
「先輩？ こんなところでどうしたんですか？」
「ああ、ごめんね。ちょっとふらふらしてたら……もうすぐ試合？」
「えと、はい。その、どこ行ったのかって皆心配してましたよ」
「ああー……ごめん。鬼道さんは関係なく私の独断だから」
何とも言えない顔になった春奈ちゃんに私は謝る。鬼道さんに濡れ衣被せられるのは避けたい。
春奈ちゃんはそう答えた私に、口を一度開いてから閉じて、唇を噛んだ。
「……どうして、向こうのキャプテンと知り合いなのを言わなかったんですか」
感情が読めない平坦な声。そこにいつもの笑顔は見えず、中々ない様子に少し首を傾げる。
「え？ あー、うん。混乱するだろうと思ったから。倒すべき敵と友人って、ね」
さっきは思わず口挟んじゃったけれど、と苦笑する。春奈ちゃんは顔を歪める。私は何かしてしまっただろうか。
「……なんで」
聞き取れないほどの声がする。聞き返そうと思った瞬間、春奈ちゃんは泣きそうな顔でこちらを見た。
「じゃあなんで、お兄ちゃんは私と……私と話してくれないんですか！！」
びりびりと空気が揺れる。痺れるような怒気に私は息を飲んだ。
「なんで先輩は！ お兄ちゃんと友達で！ 親しげに出来るんですか！ 私が、私は！」
お兄ちゃんの妹なのに。
絞り出すような声が、私の心にも突き刺さった。
ぐらりと視界が揺れる。
……まずい、なあ。ちょっと今不安定で、彼女を受け止め切れる気がしない。
彼女の目はどんどん潤み、荒げた息で私に目を向ける。
私も、兄さんが私と連絡を絶っているのに、自分に近い人が親しげにしていたら恨むだろう。この怒りは当然のものだ。
ただ今は、誰とも話したくがなかった。表情が抜け落ちそうになるのを何とか堪える。
正当な怒りだ。私は先輩だし、彼女の怒りを受け止めてあげなければならない。大丈夫だ。大丈夫。
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黒牡丹(プロフ) - 焔さん» 好みと言っていただけて本当に嬉しかったです。書けないことになれば、とにかく頭の中に思い描いていたネタだけでも箇条書きにしてでも投稿はするつもりです。嬉しく優しいお言葉、本当にありがとうございます。 (2020年7月23日 12時) (
レス) id: 51616291f0 (このIDを非表示/違反報告)
焔 - 黒牡丹さん» レスありがとうございます。黒牡丹様が帰ってきてくださって、今の心境を教えてくださっただけでも嬉しいです。ありがとうございます。 (2020年7月14日 22時) (レス) id: 3ce071c9ce (このIDを非表示/違反報告)
黒牡丹(プロフ) - 焔さん» コメントありがとうございます。お話の続きを私自身が書くのは無理だと悟ってしまいました、申し訳ありません。なんとかして、彼女の物語を完結させたいと思います。どうか、よろしくお願いします。 (2020年7月13日 12時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
黒牡丹(プロフ) - 夜さん» コメントありがとうございます。何度もコメントしてくださっていたのに、本当に申し訳ありません。私の手から離れるかもしれませんが、それでも一度思い描いた物語として皆様の元に届けたいと思っています。読んで頂いて、本当にありがとうございます。 (2020年7月13日 12時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
黒牡丹(プロフ) - 翡翠さん» コメントありがとうございます。こんな形でのコメント返信申し訳ありません。せめて、物語として皆様の目に触れるようにしたいと思います。 (2020年7月13日 12時) (レス) id: cd13c32878 (このIDを非表示/違反報告)
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