43.事件 ページ43
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『事件です!!!!!!』
薬師高校野球部、部室のドアを豪快に開けると、
いつも通り、着替えかけの高校球児がたーくさん。
「おせーよ望月」
「着替え中に開けんなよ」
『事件が起こって遅れたんです!!!』
「早く内容言え」
いつもと変わらぬテンションの皆さんの前で、
ふふふ…とつぶやくと、
わたしは今朝一番の新聞を、バッと広げて叫んだ。
『じゃーーーーん!!!
見てくださいここ!!!
うちの野球部、写真付きで載ってます!!』
「マジか?!!」
わらわらと人が集まる。
スポーツ新聞に、写真付きででかでかと、
市大三高を破ったダークホースとしてうちの記事が載っていた。
「俺はちゃんと男前に写ってるかぁ?」
『監督はこれです。この豆みたいなん』
「な?!」
「なんだよこの記事!雷市のことばっか褒めやがって!!」
「そりゃあホームラン打ってるからなぁ」
騒ぎ出す先輩たちを眺めてニコニコしていると、
平畠が私の方に歩いてきた。
「…望月、なんで…」
『へ?』
「なんで、泣いてんの?」
『え…』
頬をこすると、手の甲に涙が一粒。
『…あれ?なんで…なんで泣いてるんだろ…はは、
今から試合だから緊張してんのかな…』
隠すつもりが、もちろん先輩たちに見つかって、
当然のごとく、わたしは散々馬鹿にされた。
今日の相手は、青道高校。
これに勝てば次は準決勝。
でも負けたら、そこで先輩達の夏は終わるんだ。
「涙は今日俺達が勝ってからにとっとけ、アホ」
『……ちゃんと嬉し泣き、させてくださいね』
「お前らーそろそろ行くぞ!!」
「おっしゃあ!!!」
……………絶対負けない。
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作者名:すた | 作者ホームページ:
作成日時:2015年12月6日 0時