13.花火 ページ13
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『鳴〜、そろそろ花火行かなきゃ』
「あと1発…………よっしゃ!」
射的でキャラメルを見事落としてガッツポーズ。
すごいすごーい!と不器用すぎてすぐに飽きたAも手を叩く。
「2人とも付き合ってんのかい?可愛いねえ」
「!」
射的屋のおじさんがニヤッと笑う。
キャラメルをAに手渡しながら、顔をうかがう。
俺はすっげぇ嬉しいんだけど。
そんな俺をよそに、Aはケラケラ笑ってキャラメルを口につっこんだ。
『まっさかー、幼なじみですよー、腐れ縁の』
さ、行こ!とAが俺の手を引いて走り出す。
そして、川辺についた。
『わー、もう始まってる』
どん、どん、と花火が打ち上がる。
たくさんの人。
打ち上がるたびに、Aの顔がぴかぴか照らされて、
くちびるが、ほっぺが、色っぽくつやめく。
……………キスしてえ、
同じくらいの背。
隣でキラキラした目で花火を見るこの幼なじみのことが、本当に本当に好きだった。
顔だって普通、
頭だっていいわけじゃない、
運動だって平凡レベル
恋愛のドラマや映画なんてほとんど見ないけど、
この片思いから、絶対的に言えることがある。
好きに、理由なんてないってこと。
『あっ!見て、鳴!』
身体のでかい、たくさんの高校生くらいの人の方を見てAが言う。
『野球部の人たちだよ、高校生の。
…市大三高、かな?』
「…そーだね」
『去年甲子園行ったとこだね。
…鳴も、このまま野球続けたら、甲子園とか行っちゃうのかあ』
「…そーかもね」
『いいなあ、私も行きたい』
お前は、なんとなく、ただなんとなく言ったのかもしれないけど。
「…連れてってやるよ」
『…え?』
「俺が、甲子園に、連れてくから」
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作者名:すた | 作者ホームページ:
作成日時:2015年12月6日 0時