136.安心 ページ7
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誰もいない場所で、鳴はずっと、泣き止むまで私のそばにいてくれて、
泣きはらした私の顔を見て、「すっげえ不細工、」と笑った。
「帰ろっか。送ってやろーか?」
『…………いいの?』
「他に送ってくれる人もいないんでしょ。うち今日勝ったし、機嫌いいから特別」
「それにそんな顔で1人でいたら、お前完全に振られた女だよ」そう言って鳴は笑って、
私も『古傷思い出させないで』と笑う。
このくだけた会話が、私をこんなに安心させる。
2年の夏、そして秋。
私は、この人に恋してた。
「やーほんとブサイクだわ。元から大したことないのに。マスクでもする?」
『鳴買って』
「…そのままでもカワイイよ!」
『声裏返ってるけど』
だめだ、だめだよ。この笑顔に安心するからって、
きっとこれは"好き"じゃない。
振られたから何かに寄っかかりたいだけなんだ。
この気持ちが好きなのか、頼りたいだけなのか、
きっとそれは、時間が経てば自然とわかる。
「じゃーねA。メールくらいなら返してあげるから送ってこいよ」
『電話は?』
「1日5分ならしてやるよ」
『暇人じゃん』
「お前もな」
にししと笑って、私は駅の改札口を通って鳴に手を振った。
だいぶ気持ちは楽になっていて、
私の気持ちは、たぶんものすごくぐらついていた。
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作者名:すた | 作者ホームページ:
作成日時:2016年2月16日 17時