135.無理 ページ6
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『…私、一也に振られたんだ。思いっきり、見事に』
できるだけ憐れに見えないように笑ってる、つもり。
『…足りなかった、私が足りなかったの。一也のこと好きってだけじゃ、足りなかったんだ』
だって鳴は、恩人なんだ。
自分の気持ち押し殺して、私の背中押してくれて、
おかげで私は一也と付き合えた。
ごめん、鳴。
「…言ってる意味、わかんないんだけど」
鳴は眉根にしわを寄せて言う。
「なんで振られたんだよ。はっきり言え」
『………………こういう言い方していいのか、わかんないけど、』
「いいよ、いい子ぶらなくていいから。誰もお前を責めないよ。言いたいこと言えよ」
そんな優しく言われたら、言えちゃうよ。
…だって鳴なんだもん。
『ほかの人が、好きなんだってさ』
言った瞬間、自分の中で橋が決壊した気分。
思っきし大粒の涙がこぼれて、ぼたぼた顔を流れる。
指で目元を拭いて、痛くなってくる喉を必死で抑えて、
「…なんだよ、それ、」
『………』
「何やってんだよ、あの馬鹿は」
ごめん、一也。
低い声で怒る鳴に、私、嬉しいなって思っちゃったよ。
ー『一也のことを悪く言わないで、悪いのは私なの、』なんて、
言えるほど私、いい子じゃないよ。
だって、もう、いいもんね。
私はもう、一也のものじゃないんだから。
『…鳴、つらい。つらい…悲しいよ、』
一也の手はきっと今、あの女の人を
一也の口は、きっと今、あの女の人を
『私、もうっ、………どうしたらいいのか、わかんないよ………』
抱きしめてくれる鳴の胸で、思いっきり私は泣いた。
振られて優しい人に依存する、最低な女だってことも、頭のどっかでわかってた。
でももう、無理だった。
ひとりでこの気持ちと向き合うのは、
もう私には無理だったんだ。
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作者名：すた | 作者ホームページ：
作成日時：2016年2月16日 17時
