173.頃合 ページ45
.
「御幸さん」
名前を呼ばれて目を向けると、さっき取材をしてた番組で頑張ってた新人アナウンサー。
俺と同じくらいの年、整った顔に細くて長い手足。
愛嬌のある、それでいて清楚なお手本みたいな女の子。
「私もそっちからなので、一緒に帰りませんか?」
「いーよ」
ぱぁっと彼女の顔が明るくなった。
.
.
「ズバリ聞いていいですか?」
カツカツ鳴るヒールの音。暗い夜の街。
ぽっきりと折れそうな足の隣で
「御幸さん、彼女いないでしょ」
「質問っつーか予想じゃん」
「当たりですか?」
「…俺そんな彼女いなそうに見えるかな」
頭をかくと、口元に手を当ててふふっと彼女が笑う。
その仕草すら上品だ。
そう、
「なら私、立候補したいです」
普通の男ならこれで落ちる
「女の子の欲しい夜はありませんか?」
するりと腕を絡められた
「私、秘密は絶対に守りますよ?」
「…参ったなぁ」
できるだけ申し訳なさそうに笑った
「俺好きな子いるんだよね」
「報われないんですか?」
「そう。そいつは俺のこと好きだったけど、俺があんまり振り回すから見放されたの」
「じゃあ…!」と目を輝かせるその子を見ないで笑った。
「離して」と腕を振りほどいて一歩前に立つ。
「どうしたってあいつがちらつく」
どんなに他のもので紛らわそうとしたって
「俺片親しかいないし、まだプロになって安定してねーから何もできなかったけど……」
ポケットの中、ぐっと拳を握りしめた
「頃合いかなと思って」
振り返って、人差し指を唇に当てて茶目っ気たっぷりに笑った。
「つまり俺、今絶賛片思い中なわけ。
もう用無しだろ?じゃーな」
にひひと笑うと、「ちょっと!!」と叫ぶその女の子から逃げるように走って駅へと行った。
.
392人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「アニメ」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:すた | 作者ホームページ:
作成日時:2016年2月16日 17時