134.禁忌 ページ5
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「…父の決めた相手だったの。一部上場企業に務めていて、高身長高収入、いかにも"優良物件"って感じの人だった」
空き教室に、私は彼といた。
スーツなんか気にせず地べたにお尻をつけて壁にもたれて、二人並んで指を絡ませあって。
「毎週のように食事に行っていて、食べるのはいつも高級フレンチやイタリアン。ワインを飲んで他愛もない話をして別れる、それが半年くらい続いてた」
御幸くんの手は、大きくて骨ばってて、どうしようもなく私を虜にする手だった。
「でも、とうとう痺れを切らしたんでしょうね。
ホテルに行くのを拒んだらーーー、次の日、あの人は女の子を連れ込んでた」
「…礼ちゃん、」
2人で指を絡ませあう。
感じる体温と、柔らかな空気。
心地よすぎて、虜になる。甘い甘い時間。
「そういうの、一旦、忘れちゃおう。不満があるなら、今ここで吐き出しちゃって。
もうその人とは終わったんだから、俺を見て」
私の前に彼が座って、その手が私の頬に触れて、綺麗な顔が近づく。
熱い熱い背伸びしたキスをして、慣れてなくて顔を赤くする私を見ると、年下の彼はイタズラっぽく笑う。
「ほんっとキス、苦手だよね」
「…うるさいわね、経験ないのよ、そういうの」
「やめてよそういう言葉。男を喜ばせちゃうんだよ、そういうの」
綺麗な唇からは、甘ったるいセリフが何度も飛び出して、私の心をこんなに簡単に溶かしてくれる。
好き。…好き。どうしようもなく彼が愛しい。
キスをしている間は、忘れられる。
安心できる。
高校生と教師が交際する禁忌だなんてこと、忘れられる。
「…あの子、薬師の子。彼女だったんじゃないの?」
ふと思い出してそう聞いた。
私は残念そうな顔をして言うけど、残念だなんて全く思ってない。
我ながら性格悪い、本当にそう思う。
だって求めてる言葉は1つ。
「…いーんだよ、俺は、…礼ちゃんのことが好きだから」
こうして私は、自分の心を、確かめるように安心させるんだ。
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作者名:すた | 作者ホームページ:
作成日時:2016年2月16日 17時