167.一線 ページ38
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『………………真田ぁ』
「なーに」
机に突っ伏したまま。
軽くコップを回しながらこなれた様子でお酒を飲む真田にぼそりと言う。
『…ぶちまけて、いい?』
「今更許可なんかいるかよ。どんと来い」
『…鳴が嫌なわけじゃないの』
飲みすぎたお酒に頭がクラクラして、喉が焼け付くように熱い。
最近こんなふうに馬鹿みたくお酒にばかり頼ってる。
前が見えない。高校生の頃のように、前だけ見て突っ走れない。
『優しいし、面白いし、これ以上なく安心するし、…好きなの。でもね、』
それは口に出してはいけない言葉。
『幼なじみは所詮、幼なじみなんだ。
……そこは越えられないんだよ』
鳴の隣は好きだ。
ほっとする、安心する、私が私でいられる。
でも違うんだ。私はもう、知ってるんだ
一也の隣を。ふらふらと私を振り回すあのイタズラっぽい瞳を。
好きで好きで仕方なくて、気持ちが溢れて好きと告げる。告げれば彼は「ありがとう」と口角を上げながら笑う。何でもお見通しなその目で
『……………ごめん、やっぱ、なんでもない』
顔を上げずにつぶやいた。
『……忘れて………』
こんな話真田にしかできない。
彼は受け止めてくれる。
思ったことをそのまんま上手に伝えてくれる。
真田が何考えてるのか、この時の私は知りもしないで、知ろうともしないで。
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作者名:すた | 作者ホームページ:
作成日時:2016年2月16日 17時