終章 これを恋と人は言う。 ページ18
「黛さん、卒業おめでとうございます」
早咲きの桜がひらひら舞っている。その木の下で私は黛さんと向き合っていた。
「……A、黛さんじゃないだろ。付き合ってるんだから」
卒業証書が入った筒を持って、黛さんが私の耳元でそう言う。付き合いだしてから、近くなった距離に私はまだ慣れないのだ。
「う……ち、千尋さん」
羞恥に耐えながらそう言えばよく出来ました、と額に一つ口付けを落とされる。黛さんは案外キスが好きらしい。暇さえあればしてくる。……人がいるところでやられると困るがこう人気がない場所だと許してしまう辺り私も大概だと思う。
「……後輩の前でイチャつくの、辞めてくれません?」
後ろからかけられた声に跳ねればそこには赤司くんが居た。まさか、見られた?
「卒業おめでとうございます、黛さん。神崎先輩は悪い虫がつかないよう、一年間目を離しませんのでご心配なく」
どうぞ後腐れなく卒業していって下さいという赤司くんに黛さんが渋面を作った。
「なんか俺とAが付き合いだしてからお前、俺に対して辛辣になってないか?」
「気のせいでしょう。俺は元々こういう性格ですから」
バチバチと見えない火花が飛んでいるような気がして目を擦る。思い過ごしだといいんだけれど。
ざあ……と風が吹いて舞う花びらの量が増える。隣に立つ黛さんの手を掴んで顔を見合わせて笑った。
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黛夕那(#・∀・#)(プロフ) - あの、初めの千尋saidで神崎葉月ってでたんですが… (2019年9月1日 12時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
ゲスでゲス - かぁいい作品をありがとうございました・・・ (2018年8月26日 9時) (レス) id: ed4900357a (このIDを非表示/違反報告)
カコ - すごく可愛かった。キュンとした。素敵な作品をありがとう。 (2018年7月22日 21時) (レス) id: 87181eb08c (このIDを非表示/違反報告)
マリア - 続読めたいです (2017年9月26日 10時) (レス) id: 8569ec9184 (このIDを非表示/違反報告)
葉隠叶芽(プロフ) - 飛鳥さん» ありがとうございます!なるべく早く書き上げられるようにしますので楽しみに待っててください! (2017年7月7日 23時) (レス) id: 0edaa43e99 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:葉隠叶芽 | 作成日時:2017年3月23日 20時