Diary15 本番は迅速に行動せよ。 ページ16
やばい。なにがやばいって私はこの扉を開けれそうにない。金曜日、今日はバレンタインデー。校内では至るところでチョコレートの甘ったるい匂いを感じる。
本命でも義理でも貰えれば男子には嬉しいものらしくここに来るまでに実渕さんに根武谷くん、葉山くん挙句の果てに赤司くんまでもがチョコ下さいとやって来た。
もちろん作ってはあったので渡した。自信作のトリュフである。その場で根武谷くんたちにはたいらげられたけど。美味しいという感想が返ってきたのは嬉しかったなー。うん、駄目だ。現実逃避も大概にして目の前の景色を見ることにする。
今は昼休み、私の前には屋上の扉、恐らく屋上には黛さんと誰か。ポツポツと聞こえてくる言葉は恐らく――
「あの、私、黛先輩のことが好きで――これ、受け取ってください!」
ですよねー!それ以外に無いよね!脳内で盛大に絶叫しながらその場でうずくまる。これは間違いなく告白というやつで、黛さんは今年で卒業だから最後に……だろうか。
「あー悪い、そう言ってくれるのはありがたいんだけど俺、好きな子いるんだ。ごめんな」
悶々と考えていたその時、気まずそうに返した黛さんの言葉にざあっと血の気が引く感覚がした。……好きな子?その一言がぐるぐると頭の中を回る。居た、のか。そうだ、いくら仲良くして貰っているからって私と黛さんは只の先輩と後輩だ。黛さんに好きな子が居てもなんらおかしくはない。
バタン、バタバタ!
突然開いた屋上の扉に私は隠れ、女の子が一人駆けていく。きらりと光る雫があった所をみると泣いていたのだろう。開きっぱなしの扉から屋上の中を覗けば、ばっちり黛さんと目が合ってしまった。
「……なんだ、神崎居たのか。もしかして聞いた?」
「……ばっちり。でも少しびっくりです。黛さん、好きな人いたんですね」
ズキ、と痛む心は無視して無理矢理に笑顔を作る。後ろ手に隠し持った箱はどうしようか。好きな子からしか受け取らないというのなら受け取っては貰えないのだろうか。義理、なら構わないかな。
「で?神崎は後ろに持ってるやつくれないのか?」
「……なんで分かったんですか。義理ですけど、どうぞ」
バレてしまってはしょうがない、とラッピングした箱を渡す。実は黛さんのだけは箱の色が違うのだ。……自己満足だけど。
Diary16 夢ではなくて現なのだから。→←Diary14 眩しい、けれど好ましい。
41人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黛夕那(#・∀・#)(プロフ) - あの、初めの千尋saidで神崎葉月ってでたんですが… (2019年9月1日 12時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
ゲスでゲス - かぁいい作品をありがとうございました・・・ (2018年8月26日 9時) (レス) id: ed4900357a (このIDを非表示/違反報告)
カコ - すごく可愛かった。キュンとした。素敵な作品をありがとう。 (2018年7月22日 21時) (レス) id: 87181eb08c (このIDを非表示/違反報告)
マリア - 続読めたいです (2017年9月26日 10時) (レス) id: 8569ec9184 (このIDを非表示/違反報告)
葉隠叶芽(プロフ) - 飛鳥さん» ありがとうございます!なるべく早く書き上げられるようにしますので楽しみに待っててください! (2017年7月7日 23時) (レス) id: 0edaa43e99 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:葉隠叶芽 | 作成日時:2017年3月23日 20時