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Diary12 垣間見える独占欲は扱いづらい。 ページ13

先程から、隣を歩く神崎の元気がない。昼食を食べた店を出て、色々な店を除きながらもう一つの本屋を目指す。店先に展示された色とりどりの服、小物。それさえも神崎の気持ちを動かすには至らないようだった。

「あ……」

一つの店を見つけた神崎が店先に駆け寄る。どうやら雑貨屋であるそこはその類の店にしては珍しくアクセサリーが豊富に飾られていた。

男である俺には理解しようがないが女子はこういったものにひどく惹かれるということはなんとなく理解している。邪魔すると面倒くさいと言うことも同い年の従姉の存在で思い知っているし。じっと陳列された商品を見る神崎の視線はある一点に注がれていた。

「綺麗……」

青みを帯びた灰色のリボンに薄水の石がついたヘアピン。かなり大振りで目立つものだが色のおかげか思ったほどの派手さは感じない。

「神崎、これ買うのか?」

「うーん……綺麗だとは思うんですけどいかんせん値段が……ちょっときついですかね」

確かにそれはしっかりとした設えをしているからか一般的なアクセサリーよりも少し高めの値段だった。俺も神崎も今日は本を買い込むつもりだったのでそれなりに所持金はあるのだがこういったものを買うくらいならまだ新しい本を買いたいのだろう。ギリギリ買っても平気だろうか。……本を一冊諦めるか。

俺はそれを手に取ってレジへすすんでいく。相変わらず気づかれる時にビビられたがなんとか買うことが出来た。値札を取ってもらったばかりのそれをぽかんとしている神崎の髪、丁度右耳の辺りにさす。

「似合ってる。やっぱり色が合うな」

「え、ちょ、黛さんなんでこれ……別に買ってこなくても良かったんですよ?」

「良いんだよ。サイン会のチケット貰ったお礼だ。それに欲しかったんだろ?」

抗議の声を上げる神崎にそう言えば顔を赤くして押し黙る。アクセサリーの灰色が神崎の艶やかな黒髪に映えていた。

「……ありがとうございます、黛さん。大切にしますね!」

ふにゃりと笑う神崎に体の芯が熱くなる。だからそういう顔をするなっての。まあ、自分が贈ったものを好きなやつが着けてるっていうのは悪くねぇな。

なんかこう……自分の物、みたいな?

Diary13 面倒臭い相手は何故かこちらの都合を知らない。→←Diary11 幸せな時間はそう長くは続かない。



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黛夕那(#・∀・#)(プロフ) - あの、初めの千尋saidで神崎葉月ってでたんですが… (2019年9月1日 12時) (レス) id: 590d5b732c (このIDを非表示/違反報告)
ゲスでゲス - かぁいい作品をありがとうございました・・・ (2018年8月26日 9時) (レス) id: ed4900357a (このIDを非表示/違反報告)
カコ - すごく可愛かった。キュンとした。素敵な作品をありがとう。 (2018年7月22日 21時) (レス) id: 87181eb08c (このIDを非表示/違反報告)
マリア - 続読めたいです (2017年9月26日 10時) (レス) id: 8569ec9184 (このIDを非表示/違反報告)
葉隠叶芽(プロフ) - 飛鳥さん» ありがとうございます!なるべく早く書き上げられるようにしますので楽しみに待っててください! (2017年7月7日 23時) (レス) id: 0edaa43e99 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:葉隠叶芽 | 作成日時:2017年3月23日 20時

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