【イナクロ】黄名子ちゃんも裏切り者でした。Part2 (ページ3)

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Oblivion.33.　ページ3

「実は………今日は皆さんにちょっとしたお話があるんですよ」

そう言った鏡音院さんの顔は微笑んでいるのに、何処か悲壮感を漂わせていた。
僕は彼女のそんな顔を見るのは初めてで、にわかに信じられなかった。

一体何を話し出すのか、僕は警戒をするように少しだけ身構えると、
じっと鏡音院さんの言葉を待った。
数秒間が空いて、すぅっと大きく息を吸って吐いて。彼女は口を開いた。

「――実は……ねぇ? ここだけの話。
　Aちゃんにはとある秘密があるのでした」

まるで絵本の物語でも読むような感じ。流暢な言葉で紡がれたそれに、
呆れと焦りの感情と純粋な彼女への疑惑が、
僕の頭のなかでぐちゃぐちゃに混ざりあった。

―――僕の秘密? 一体何?

そんなもの彼女が知るはずもないのに。いや,そもそも。
僕に彼らに何か隠すことなんて…秘密なんて……ある訳…が……――。

―いや。

一つだけ。一つだけあった。彼女と僕と黄名子ちゃん。
そして僕たちのクラスメイトたちしか………知らない…大事な――秘密――が。
それは――"裏切りgame"だった。まさか、鏡音院さんは………"裏切りgame"の事をっ…?
だけど、それは皆に口外して良いものだったのだろうか…。

考えるけど。

――……解らない。

何でだろう。

違う。

あれ。

なんでか頭が痛くなる。どうしてだろう。考えれば、考えるほどズキンズキンと次第に痛くなる。
やめよう…やめよう。今は考えるのを。今は、しっかりしていなければ。
だけど、もし彼女が"裏切りgame"の事をサッカー部の彼らに言おうとしているのならば、
これもまた彼女たちの裏切りgameの一環なんだろう。
でも、これは僕にとって彼らに一番知って欲しくない秘密だった。
だからずっと隠し続けて来たのに。

「………よ。…………」

「……てよ!………やめ……てよ……っ…!」

僕らそれぞれの反応を一瞥して、次の言葉を紡ごうとしていた
鏡音院さんに向かって、僕は言い放った。
そうすれば、次第に笑っていった鏡音院さん。口角をあげてくすりと笑う。

「……ふうん。Aちゃんのそんな顔初めて見たなぁ」

「ねえ。そんなに嫌なの? あなたの秘密話される事」

まるで、面白い玩具を見つけた子供のように笑って。
呟く鏡音院さんの声は、とても冷たいものだった―――――…。