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「…2日しか、ない」
『記憶は無くなっちゃうんですよね』
「…せやな」
『………みんなの中から、私の記憶が無くなるのは…嫌だなぁ』
「……僕は覚えとるよ」
『嘘だぁ〜』
何とかして、笑わないと
何とかして、彼を困らせないようにしないと
言いたいことは全部、言っておかないと
あの時みたいに後悔をする
あの日みたいに忘れたくない
忘れて欲しくない
グッと込み上げてくる涙を止めようと少しだけ口を閉じた
帰らなきゃいけないことは分かってる
わかってるんだ
『…』
「ホンマに、甘え下手やな」
『っうわ』
「さっきまでは素直やったのになぁ……ちゃんと上手に泣けるいい子やったのに」
耳元で囁かれる声が甘くて
思わず身体が跳ねる
ゾムさんに空けられたピアスに触れた彼は、首筋へ唇を落とし
いつもの様に痕を付け始めた
耳に入る音が心臓に悪い
……いや、悪すぎる
「ちょっとだけ、マーキングさせて?」
『い、嫌がっても、やるじゃないですか』
「うん、せーかい」
軽く首を甘噛みされつつ、いくつもキスマークを落とされる
「ん……」と鬱さんの声が聞こえる度に心臓が爆発しそうで
早く終わってくれ
と願いながら、ベットのシーツを掴んでいれば「可愛いなぁ」と耳元で囁かれた
『…ぅ、つさ……擽ったいから……うわ、耳はやめ……っ!?』
「ゾムのマジで腹立つわ」
首筋に痕を残していた彼は、耳朶をを口に含み優しく噛んできて
ぞわりと背筋が凍り
慌てて耳を隠すように手で覆い、逃げる様に体を丸める
『み、耳はダメでしょ!?』
「……ゾムに開けさせたのが悪いんやろ」
バクバクとうるさい心臓
泣きたくなる私に鬱さんは少し黙ってから仕方無しと溜息をつき
「もうしないからこっち来て…?」と私の手を引いた
……無限ループとはこの事だな
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美雨 - 小説で久しぶりに泣きました。最高の作品でした。大好きです。 (7月26日 18時) (レス) id: c21832273f (このIDを非表示/違反報告)
はーな(プロフ) - 読み終わったあと感動で胸が締め付けられました。神作に出会えてよかったです!! (2022年9月2日 19時) (レス) @page27 id: e031897919 (このIDを非表示/違反報告)
海 - 泣けた。やばいですよもう。 (2022年8月14日 21時) (レス) @page27 id: 5511dd41f6 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい - 感動してめちゃめちゃ泣いた.....しかもこの小説私の誕生日に作られてる、運命かな......... (2022年7月19日 21時) (レス) @page27 id: 4f57f42090 (このIDを非表示/違反報告)
あたり(プロフ) - 最近この界隈に戻ってきて転生と外せかのシリーズを読み返していたのですがこれは読んだことなかったなと気付き読み始めたら…感動しました……外せかはガチで泣きましたけどこの作品も相当良かった……なんで当時読まなかったのかが不思議です…ありがとうございました (2022年4月17日 12時) (レス) @page27 id: f83fcb16fe (このIDを非表示/違反報告)
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