ロマンスな出会い【梅原裕一郎】 (ページ30)

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最善の策ページ30

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「え、じゃあAちゃんのお母さんは良いと思ってなさそうなの？」
「まあそんな感じです」

Aとの間を取り持ってくれた江口さんには話しておこうと思って話したらびっくりしていた。自分もびっくりしている。

「Aちゃんはなんて？」
「不貞腐れてます。まさかお母さんにそう言われると思ってなかったみたいで」
「まあそうだよねえ…担当声優と付き合ってるなんて言えないもんね」

不貞腐れてるとは言ったけど、それもかなり厄介な不貞腐れ方だった。
仕事中はいつも通りだが、送ってもらってAが家に来た時は片時も離れなくなったし、今までは好きなんてそんなに言ってこなかったのに急に言ってくるようになった。

「可愛いじゃん〜いいなぁ梅ちゃん」
「まあ嫌ではないです」
「ちゃんと話しなきゃだね。ご両親と。まあきっと心配なんだよ。娘だし可愛いんだよきっと」
「ですよね。それは分かります」
「お兄さん亡くなってもうご両親にはAちゃんしかいないからね」

そうか。そういうことか。
Aのことを大切に思ってるからそうやって言ってくれる。担当声優と付き合ってることによって、何か悪いことが起こったらよくない。傷付くのはAだから。

『梅原さんが家来たいって言うの珍しいですね』
「ん、ああ。そう」
『え、なんか他人事…どうしたんですか？』

これを言うのは凄く精神的にしんどいけど、こうするしかない。

「A」
『はい…どうしたんですか？』
「お前、俺のマネージャー辞めろ」
『…え？』

Aが傷つかないようにするにはこうするしかないと思った。馬鹿だとは思ったけど、これが最善の策だった。