ロマンスな出会い【梅原裕一郎】 (ページ29)

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母君臨ページ29

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Aのお母さんが来た。
奇跡的に人前に出られる格好をしててよかった。

『お母さん久しぶり〜！来るなら言ってよ〜！』
「昨日LINEしたよ？」
『あれ、本当に？あはっ、気付かなかった』
「A、そちらの方は」
「ご挨拶遅れてすみません。Aさんとお付き合いさせて頂いています。梅原裕一郎と申します」
「Aの…彼氏！？」
『ちょ、お母さん声でかいよ！』

Aも負けてないくらいでかい。
お母さんは相当びっくりしたらしく、言葉が出てきていなかった。そんなに驚くことなんだろうか。いや、驚くか。久しぶりに会った娘に彼氏が出来てて、しかも家にいたら。

とりあえずリビングに行って、誰も口を開くことの無い地獄のような時間が始まった。
先手を打ったのはA。でも凄くなんか辿々しかった。

『あのっ、お母さんっ……最近どう？』
「最近どうはこっちの台詞だよ」
『すいません…』
「梅原さんとはどうやって出会ったの？」
『実は…』
「僕のマネージャーをやって頂いてまして、」
「マネージャー！？」

あまりの驚きようにこっちがびっくりした。

『彼、声優さんなの』
「A…公私混同はまずいんじゃない？」
『っ…』

公私混同
それは考えたことがなかった。確かにマネの仕事をしてくれてる中で、Aの面白い所とかに惹かれて好きになった。公私混同してると言われてもおかしくはない。

『仕事は仕事で割り切ってるから』
「それでもね、他の人が見た時どう思うか考えた？」

他の人が結構くっ付けるような機会を作ってくれてたんだけどなと思ったけど口には出さなかった。

『私は梅原さんが仕事しやすいようにサポートしてるし、それはそれでちゃんと分けて考えてる。付き合ってるからって、そこの融通効かせたりとかそんなことはしてない』
「A、今はそれでいいかもしれないけどね、今後時間が経つとそうはいかないことも出てくると思う。ちゃんと考えなさい。じゃあお母さん帰るね。顔見たかっただけだから。梅原さん、不甲斐ない娘ですけどよろしくお願いしますね」

はい、と返事をしてお母さんを見送った。
立ち尽くして動かないAの代わりに鍵を閉めてリビングに戻ろうとしたけど、Aは動かなかった。

今まで自分達の仲を応援とまではいかないけど、そういう感じで言ってくれてる人が多かったから、ここにきて意見が彼女の身内から出てくるとは思わなかった。