抱き締めてください，太宰さん

13.太宰さんへ ページ13

太宰さんへ。


この手紙を貴方が読んでいる，という事は，私は本当に死んだのでしょう。
なんて，ありきたりな始め方をしてみます。


拝啓，太宰さん。

拝啓の使い方がよく判らなかったので，取り敢えず書いておきますね。


太宰さん。

もう気付いているとは思いますが，私，4年前のあの時死にました。

でも死ぬ直前に，異能力を使おうとしたんです。
そうしたら，死んでから生き返って。
でも15分経てば，また死にそうになりました。

その時は，そのまま死ぬつもりでした。
でも，最期に貴方に逢いたかったなぁ，って思って。
願ったんです。
まだ生きたいって。
生きて，貴方に逢いたいって。

そしたらまた，生き返っていました。
生き返るのは，死んだときの状態で，なのでいつも生き返る度に全身痛いし，結構血が流れるんですよ。
だから，何時も10分程しか話せなくて……。
ごめんなさい。

ポートマフィアは辞めました。
15分に一回死ぬ躰だと皆さんに迷惑が掛かりますし，何故か他の人に対して異能力が使えなくなっていたので。

貴方が武装探偵社に入るか？ と聞いて呉れた時，本当は，凄く入りたい，って思ったんです。
それなら貴方ともっと一緒に居られるから。
でも。
貴方にだけは，本当の私を知られたくなかった。
本当は死んでいる，っていう事も，死んで，死に続けてまで貴方に執着しているって事も，知られたくなかったんです。

その後，私が，ホッとした？ って訊いた時，貴方はそんな事ある訳ない，って云って呉れて。
本当に嬉しかったです。

私は，もう自分の意志で命を終わらせられない程に生に憑りつかれてしまっていて。
でも毎日，死にたくて死にたくて仕方がなかった。

最初は，貴方の顔を見たらその日の内に死のう，って思っていました。
でも，貴方にまた明日，って云って。
貴方と話すのが凄く楽しくなっていきました。

この儘じゃ駄目。
解っているのに，貴方に逢いたい。
もっと生きたい。
死にたくなかった。

そんな気持ちばかりが膨らんで，貴方に，自分に甘えてしまいました。
でも，もう終わらそう。

あの日，そう決めました。
なら最期に，貴方に，抱き締めて欲しい。
そう思ってしまいました。

大好きな，貴方に。

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