【川西賢志郎】キレイな心。 (ページ4)

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ミストページ4

「へえ～。で、その子が気になって仕方ないってことか？」

昨日の出来事を水田に話した。

いつも冷静でなおかつ確実なことを言ってくる水田だから反論されるのは覚悟の上だ。

「そういうことや。俺さこの歳で独身で彼女もおらんから飢えてるだけなんかな？」

３４歳。独身。彼女は約１０年間なし。

この状況だから飢えてると相方に指摘されても正直納得はいく。

「いや、意外とそうじゃないかもしらんで。運命なんて歳とかそんなん関係ないやん。
　しかもお前、今までどんな女の子にもそんな興味なかったんやから急に飢えたとかは違うやろ」

水田の割に反論しなかった。いつもの冷静な判断と同じ顔をしていた。

「やっぱり何かしら、ときめくものがあったんや俺の中で。」

水田に恋愛相談なんかしたのは、いつぶりだろう。

「で、今日もその電車に乗るつもりなん？」

劇場終わりで少し汗ばんだ顔を拭きながら水田が言った。

「んん～...そうしようかなあって思ってるけど」

久しぶりの恋愛相談に今頃恥ずかしくなってきた。

「やらんことには何も始まらんし、昨日と同じ時間の電車に乗ってみたらいいやん！」

水田は、ネタになると俺のツッコミに小言ばかり言い繊細さを滲み出そうとするが

プライベートでは頼りになる前向きなことばかりアドバイスしてくれる。

しかも恋愛相談となると反論すらしてこないことが今、分かった。

「せやな。自分の直感信じてみるわ！」

口元を緩ませそうになりながら帰る準備を着々とすすめている水田に告げた。

「じゃあ、俺は家帰って寝るわ。明日は８時な！」

カタッ。

何か音がした。

「おう！...ん、水田今なんか落としたで」

ガチャンッ。

振り返ったときには、水田は楽屋を出ていた。

「あ、まあええか。」

そう呟いて俺も電車に乗ることを楽しみに帰る準備をした。

「あれ、コンタクトケース... あ。水田の机にあるやん。」

コンタクトケースを取り、楽屋を出ようとするとそこには香水のようなものが置いてあった。

「ん？ベローミスト？ローズの香り？さっきの音、水田がこれ落とした音か。」

ミストをバッグに入れ俺も楽屋を出た。