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標的29 ヒーローに ページ34

あの拾われた日からどれほど経ったのでしょう。ここにはカレンダーが置かれていないので日付感覚があまりありませんが、1年くらいは経ったかも知れません。
私の悪運は中々強いものでして、今ではここにいる子供たちの中で年長者になってしまいました。これが喜んでいい所なのかはわかりませんが。

そんな私ですが、1度脱走を図った時がありました。もちろん大人達の行動範囲や時間を把握した上で私の脱走作戦は誰が見ようと完璧でした。
ですが、ここを通り抜けて外へ出れば全てが終わるというその1歩手前で、誰かと話すエレナの声が聞こえてきたのです。

「エレナ。今月はなんだ、全然子供を連れてきてないじゃないか」
「ごめんなさい、身寄りのない子供たちって案外少なくて…」
「だったら公園で遊ぶ子供を攫ってきたらいいんだよ」
「そんな!家族のいる子供たちにそんなことっ…!」
「全く減らず口だな、こっちには人質がいるっていうのに。せいぜい生きてることを願うんだな」

ニタニタと気色の悪い笑みを浮かべながら去っていく男。

「あぁ、あなた…アリーチェ…私は一体どうしたらいいの」

家族……が人質に取られているのだとわかりました。私はどうしてもそんなエレナを置いてどこかへなんて行けませんでした。
どうにかしてあげたいのです。命の恩人であるエレナを…

それから私は、エレナの信頼を得るためにそれはもう沢山話しかけました。誰かに話して少しでも気が楽になればいいと。ですがやはりというべきかなかなか身の上話をしてくれません。私では彼女のヒーローになれないのでしょうか。

「ルカは他の子達と遊ばないの?私ばかりじゃつまらないでしょう」
「…僕はエレナがいいんですよ」
「そうなの?でもたまには同世代と遊ぶのも違った楽しみがあるかもよ?」

どうして彼女は自分に向けられた好意を、素直に受け取れないのでしょう。

「エレナは僕のことが嫌い…ですか?」
「ううん。そんなことないわ。どうしたの?」
「僕は…エレナを助けたいんです」
「!……あはは、おかしな子ね… それは貴方のセリフじゃないわ。本当なら私が貴方に向けて言うべきはずのセリフよ」

苦々しそうに笑う彼女。

「僕じゃ、務まりませんか」
「……ありがとうルカ。その気持ちだけで十分よ」

そうして優しく私を抱きしめてくれます。
ああ、この温もりを守りたいのに守らせてくれないなんて、神様はなんと酷いお方なんでしょう。

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設定タグ:成り代わり , REBORN , 転生   
作品ジャンル:アニメ
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南条(プロフ) - 黒猫♪♪さん» 感想ありがとうございます!とても励みになります…! (2018年4月10日 7時) (レス) id: 05ac4354b9 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫♪♪(プロフ) - とても面白いです!自分のペースで更新頑張ってください! (2018年4月7日 4時) (レス) id: 80ca512ce2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:南条 | 作成日時:2013年8月30日 0時

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