標的28 地獄 ページ33
エレナは、
ここを家だと思っていいのよ
と言いました。
…ですがこんなところ家なんかじゃありません。ここは地獄です。
拾われた身ですが、そう言わざるを得ないのです。
ここ―――エストラーネオファミリーの本拠地の片隅にある廃ビル―――では子供を使っての人体実験が繰り返されているのです。狂った大人達のせいで、子供が苦しんでいる場所です。
ある者は、麻酔なしの治療。ある者は、名も無き薬を投与される。顔を見なくなった子たちは数知れません。
しかし困ったことにエレナは唯一狂った大人じゃないのです。子供たちに絵本を読み聞かせたり、追いかけっこをしたり、ご飯を作ってあげたり。地獄に連れてきた死神なのに、彼女自身はどうしても憎めないのです。
「エレナ。貴方は良い人です」
「どうしたの急に？」
くすくすと小さく笑う彼女に、私は何度だって救われました。初めて実験体にされた時にまともに体が動かなくなり恐怖に震えていたときも、目の前で他の子がファミリーの一員にぞんざいに扱われてそのまま息絶えたときも、いつも彼女がそばにいて悲しそうな顔をして私を抱きしめるのです。
温もりとは反対の顔はとてもちぐはぐで、私は安心すると同時にエレナのことが気にかかりました。
「でも、悪い人でもあります」
「……そうね」
「何があなたにそうさせるのでしょうか」
「………子供が知らなくていい話よ」
どこか遠い目をしてそう答えるエレナは何か訳ありな雰囲気を感じます。
教えてもらえないのは私が子供だからでしょうか。それとも彼女は―――人を信じるということを諦めてしまっているのでしょうか
…ああ、この地獄はいつになったら終わるのですか。早く両親の仇とAの捜索をしなければいけないというのに。
地獄はまだまだ続きます。
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南条(プロフ) - 黒猫♪♪さん» 感想ありがとうございます！とても励みになります…！ (2018年4月10日 7時) (
レス) id: 05ac4354b9 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫♪♪(プロフ) - とても面白いです！自分のペースで更新頑張ってください！ (2018年4月7日 4時) (レス) id: 80ca512ce2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：南条 | 作成日時：2013年8月30日 0時
