岩石のような先輩 ページ9
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「 ……ねぇ、お前ほんとウザい 」
「 先輩の力が無さすぎるだけですー! 」
「 僕は伊沢みたいに鍛える気はないの。さっさと戻れ馬鹿 」
「 遠慮します! 」
「 遠慮すんな 」
暫くの攻防の末、先輩は私がびくともしないことを察すると、面倒くさそうに手を離して「 はぁ、もう勝手にしろ 」と体をデスクに戻した。
こういう攻防戦に持っていけば、大抵の場合先輩の方が折れる。
たまに私の方が誰かに呼ばれたりして仕方なく諦めることはあるが、諦めの早い先輩と諦めの悪い私だ。どっちが先に折れるかなんて分かりきっていることだろう。
「 仲良いですよね、河村さんと立華さん 」
「 そうなんですよ!!! 」
「 僕は嫌いだよ、こいつ 」
「 またまたぁ、ほんとは私のこと大好きなくせに〜 」
「 特に今とか殴りたくて仕方ないよ 」
先輩に頭を鷲掴みにされるなんてもうすっかり慣れっこ。
本当だったら今頭を掴んでる大きな手に優しく撫で撫でしてもらいところだけど、私と先輩の関係性なら、これでも十分過ぎるくらいのスキンシップだ。
特に、他人と壁を作りがちな先輩となら、これだけでも飛んで喜べるレベルである。
「 しずくちゃん先輩も伊沢さんと仲良しですよね! 」
「 いや、あれはストーカーされてるだけというか……寧ろウザいというか…… 」
「 まぁまぁ、嫌よ嫌よも好きの内って言うじゃないですか。ねー先輩! 」
「 あぁ、あの加害者側が自分の都合よく作った言葉ね 」
「 この世の真理ですよ!! 」
「 少なくとも僕には当てはまらないよ。てか離れろ、暑い 」
ナチュラルに先輩の腕に抱きついたら虫を払うように剥がされた。
照れ隠しなんですね分かります。
周りはよくこんな私を見て「 そんな冷たい対応されて心折れないって凄いね 」と驚くが、寧ろ私はこれくらいで心が折れてちゃ先輩の背中警備員は勤まらないなと思う。
先輩みたいな人は、押してダメなら引いてみろじゃない。押してダメならもっと押してみろ!が一番効果的。ってうちのばーちゃんが言ってた。
動かない岩石のような人だって、押し続けてればきっといつかは動いてくれるんだから。
「 あ、もうお昼だ 」
「 行かない 」
「 まだなにも言ってない!!! 」
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作者名:朝田 | 作成日時:2021年2月26日 0時