もう一人の先輩 ページ10
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「 先輩先輩！これこれ！見てください！！ 」
今日もまた半ば強引に先輩と昼食を済ませた午後、私は美味しそうなカフェを見つけて先輩に全力でアピールしていた。
この状況に慣れきっている先輩は安定のスルー。
それでもめげずに話しかけていると、面倒くさいことに、今日は運悪くあのくそウザチビ野郎の邪魔が入ってしまった。
「 立華、河村さん困ってんじゃん。いい加減ウザいからやめなよ 」
「 そうだそうだー 」
部外者のくせに先輩の二つ隣の席からヤジを飛ばしてくる男の名は、山本祥彰。
普段はいかにも無害ですといった顔で近寄ってくるが、実際のこいつは腹の底真っ黒くろすけ野郎だ。笑顔で飛んでもない毒を吐いてくるし、策士だし、取り敢えずとことんあざとい。
全部計算し尽くして相手の懐に忍び込むスタイルのこいつと、相手の壁を猪突猛進スタイルで突き破る私。
タイプが正反対なのは明白だ。故に私はこいつとは合わない。以上。
因みに私が通う大学の先輩で、不運なことに働き先が一緒になってしまった私は、卒業後もこうしてウザ絡みされている。
神様、私が何をしたって言うんですか。ただ毎日先輩にウザ絡みしてるだけじゃないですか。天罰が下るなら奴の方ですよ全く。
「 山本だって急に割り込んでこないでよ。立華さんウザがってんじゃん。サイテー 」
「 余計な口利かなくて良いの立華。てか山本じゃなくて山本�� さん �瓩世茲佑А�後輩のくせに生意気だよお前？ん？ 」
「 私尊敬できる人にしかさん付けしないので 」
「 はー殴りたい、この笑顔 」
「 はは！奇遇ですね！私もです！ 」
先輩には例え拳骨を落とされても首を腕で捕獲されてもご褒美でしかないが、相手がこいつなら話は変わる。
私は先輩につめたーい目で見られたいのだ。お前の目にハイライトがない笑顔で見下ろされてもなんにも嬉しくない。そのあざとい顔殴るぞ、この野郎。
私と山本が笑顔で口喧嘩を始めると、いつもは全くの無反応は先輩でさえも少し焦りを滲ませる。
私たちにはよく分からないが、先輩曰く、「 お前らの喧嘩はそのうち相手を刺し殺しそうで怖い 」とのこと。
はは、半分合ってて怖いよね。
ところで夜道でこの男( 山本 )刺しても怒られないかな？
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作者名：朝田 | 作成日時：2021年2月26日 0時
