しずくちゃん先輩 ページ8
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最近、先輩は『 しずくちゃん 』と呼ばれている女性とよく一緒に居る。
少し前から興味を持ち始めていたことには気づいていたのだけど、たった数ヵ月であんなにも仲良くなっちゃうなんて。
一体私の今までの努力はなんだったんだ！とはならないにしろ、やっぱり少し寂しい。
私以外にはあんな優しい笑顔を向けるんだなって、柄にもなくネガティブになってしまうから。
「 先輩！今日はイチゴミルクとバナナオレの気分でした！どっちがいいですか？！ 」
「 お前の気分とか心底どうでも良いんだけど 」
「 イチゴミルクをチョイスするなんて流石先輩ですね！！ 」
「 お前だけ別次元に居んの？日本語分かる？ 」
柄にもなくネガティブになったって私がすることは変わらない。
朝から甘い甘い飲み物を彼にプレゼントして、自分はバナナオレを飲みながらデスクに向かう。
いつから始めたかは分からない。
昔から努力する方向が人とズレてて、もっと先輩と仲良くなりたいなって思い始めてから、なんとなくオフィスに来る道程で甘い飲み物を買うようになっていた。
そうすれば、素直にコーヒーを持ってきたときより会話が続くから、なんて。
そんな思惑を知ったら、きっと彼はもう受け取ってくれなくなるかな。
「 ……くどい 」
出た出た、先輩のちっちゃな文句。
あんなこと言って結局全部飲み干してくれるから、冷たくあしらわれても全然懲りることが出来ないんだ。
「 河村さんって甘いものが好きなんですか 」
「 なんで？普通だけど 」
「 いや、よく甘い香りを漂わせてるので、そうなのかと 」
「 あー……それは立華に言って 」
どんな切っ掛けであれ、先輩に『 立華 』って呼んで貰えることがなによりも嬉しい。
そりゃ勿論他の女性に向けるような笑顔を向けてくれたら嬉しいなーって思うけど、普段のキツい態度が私だけに使う態度だと考えると、結構悪くない。
前に福良さんの前でこの持論を展開したら「 気持ち悪 」の一言で切り捨てられたが。
「 先輩呼びました？！？ 」
「 呼んでない。帰れ 」
「 仕方ないなぁ。今日は特別にこのAちゃんが隣で作業してあげますよ！ 」
「 業務妨害で訴えて良い？ 」
先輩は隣に座った私を椅子ごと向こうにやろうとしてくるが、そう簡単には動かないのが私の流儀。
ふっ、勝った。
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作者名：朝田 | 作成日時：2021年2月26日 0時
