［完］黒死牟邸に居候してます (ページ9)

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夜の散歩 ② しましまの鬼ページ9

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「どうした人間！！！」

呼びかけ方クセあるな。
いやこの声。
聞き覚えのある声にはたと立ち止まって振り向くと、ちょうどギュンと凄い勢いで殴りかかってくるところだった。

『ギャーーー！
人違いですうううう！！！』

もうほとんど泣いてた。怖いし……。
拳は叩き込まれる寸前ででピタリと止まる。

「あ？女？」

『……えっ、しましまの鬼？』

「誰がしましまの鬼だ！！！」

こないだウチ、じゃない黒死牟邸にきた、えーと、猗窩座さんだ。
気合の入った名前だから、あのお方のお気に入りなんだろう。

『……なんか、めちゃめちゃ喋りますね。
こないだ来た時、全然だったじゃないですか。』

「お前と喋ることなど何もない。」

猗窩座さんは、さっきまでのハイテンションはどこへやら、スンとした顔で言う。

「お前とのやりとりのせいで人間を逃してしまった。」

「まだ骨のあるやつかどうか、見極めている途中だったのに。」

この人、めちゃめちゃ喋ってくれるじゃん……。
普段から黒死牟さんの塩対応に慣れきっている私は、感激した。
もしかしていい人(鬼なんですけどね)なのでは？
乗り換えようかな……。

「って、お前、なんで透けてんだ？」

相変わらずよく喋ってくれる猗窩座さんが素っ頓狂な声を上げる。

『へ。うわ！』

言われて手のひらを見れば、畦道がくっきりと透けていた。
近年まれにみる透明度だ。
まずいまずい。
屋敷へ戻っても黒死牟さんはいない。
このままだと、すっかり透明になってしまう。
以前、うっかりすっかり透明になってしまったときのことを思い出して身震いする。

ええい、ままよ、と私は、目の前で間抜けな顔をしている猗窩座さんにぽよんと抱きついた。