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すっかり暗くなってしまった空を見上げる。
あれから一時間は経っている筈だから、今はもう七時になっているんだろう。
あの後結局私と実渕さんも手伝わされ、皆で本棚を片付けた。
葉山さんと根武谷さんはいつ赤司君の説教タイムが始まるかと始終びくびくしていたけれど、終わった時にはもう窓外が真っ暗だったので明日に延期された。
ほんの少し寿命が延びただけなのにあの人達は喜びに喜んで、実渕さんと先に帰ってしまった。
さて私も帰ろうかと玄関ポーチに出た時だった。
前で二人の女子生徒が肩を寄せあって立っているのが見えた。
頻りに雨が止まないと言っている。
もしかして傘を忘れたんだろうか?
「あの」
声をかけると驚いた様子で振り向いた。
一人に持っていた傘を押し付けると
「使って下さい」
とだけ言って足早に玄関の方に歩いていった。
少し間を置いて後ろから呼び止める声が聞こえたけれど無視をする。
暫く下駄箱の影に身を潜めていると、扉のガラス窓に一本の傘の下、身を寄せあって歩く二人の女子生徒が移った。
一息ついて、立ち上がる。ポーチに出た時だった。
「割りといい奴なんだね」
後ろから声が聞こえた。
跳ね上がった心臓をどうにか押さえ込んで、不機嫌面で振り向く。
「失礼ですね。私はいつだって"いい人"です」
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