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「……」「……」
そして赤司君同様言葉を失う。
二メートルを超える本棚がドミノ倒しのように倒れていた。
薄く誇りの煙が舞っていて、本棚から飛び出した本が辺りに散乱していた。
多分この図書室にある本棚の半分程が倒れている。
茫然としていると、強い力で肩を掴まれた。
「お前は何をしてくれたんだ……」
見ればいつの間にか机を越えて赤司君が隣に立っている。
そしてとんでもない勘違いをしている。
ちらりと実渕さんの方にも目を向けると、恐ろしいものを見たかのような目で此方を見ていた。
「私がいつド○ミちゃんになりましたか。
……違います、私じゃありません」
まだ疑われるかと思ったけれど意外とあっさり肩から手は離れていった。
赤司君は心底安心したというような顔で
「良かった。もしもお前の仕業だとしたらと心配したよ」
「取り敢えず一発殴らせて下さい」
拳を持ち上げた時、隣で実渕さんが声を上げた。
手を止めて倒れた本棚の方を見る。
まだ薄く埃のたった本棚の陰からのっそりと人影が見えた。
「助けてよ〜」
弱々しい声が聞こえてきた。
その声にとても聞き覚えがあり、一気に赤司君と実渕さんの顔が強ばる。
「オイ、あんま声を立てんな、バレんだろ!」
「えーバレるって何が?」
「僕も聞きたいな」
本棚に体を挟まれていながらも呑気に会話をしていた馬鹿二人は、突然の第三者の声にぴたりと動きを止めた。
本棚の前にしゃがみこんだ赤司君が法隆寺の仏像もびっくりのアルカイックスマイルを浮かべている。
「ち、違うんだ赤司。これはその、不可抗力であって!」
「言い訳はあとで聞かせてもらおう。
……取り敢えずさっさと元に戻せ」
実渕さんが溜め息をついている横で、壁に掛かっている時計を見ると針はもう六時を指していた。
その視線を今度は机の上で開けっぱなしのノートに向ける。
まだ白い部分が多いノートを見て実渕さんと同じように溜め息をついた。
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