2 ページ4
勉強会。忌まわしいそれを考案したのは勿論ズガタカ魔王赤司君で、それを部室に入る前に聞いた私は勿論逃げ出した。
冗談じゃない、それが私の言い分。
今日は貸し借りの当番の日だったけれど、きっと皆は第一図書室の方で勉強するだろうと思って第二図書室に逃げてきた。
けれども赤司君には簡単に私の行動が見通せたらしい。
一分も経たずに見慣れたスタメンメンバーがぞろぞろと入ってきた。
あんぐりと口を開けて固まる私の肩を、実にいい笑みを浮かべた赤司君と茜が叩いた。
「逃げれると思うなよ」、と言うように。
そしてなし崩しに勉強会に参加させられることになったのだ。
最初は勉強道具がないからと対抗しようとしたのだけれど、茜が私の前に私の通学鞄を置いたところで諦めた。
*
「でもどうして六月からなんですか。期末試験は一ヶ月も先のことですよ?」
不平を漏らすと、前にいた赤司君がこれ見よがしに溜め息をついた。ムカつく。
「試験勉強は早めにしておくべきだ。そんなこともわからないのか?」
怒りを押さえようと強く握りしめたシャーペンの中で芯が折れた音がした。
「期末試験がIHに重なってんのよ。赤点取ったら補習でしょ?出場出来なくなっちゃうのよ」
茜が補足説明を付け加える。その茜の補足に、約二名程が肩を強ばらせた。
それを横目(但し蔑む目)にしつつ口を開く。
「つまり私は巻き込まれたと」
「だが一年の間に正しい勉強法を習慣付けておくことは大切だ。得をしたと思え」
赤司君はそう締め括ると、それ以上の発言を控えさせるような威圧的なオーラを出しつつ問題集に向かった。
赤司君に倣って他の面々も各々問題集に向かう。
私も苦手分野である物理の問題集を適当に捲ると、いまいちやる気の出ない自分を急かすように机に顔を近づけてシャーペンを走らせた。
*
そして今は冒頭部分である。
ご覧のとおり、根武谷さんと葉山さんが早々に集中力を切らし赤司君の雷をくらっている。
その騒がしさのせいでとばっちりをくらって勉強は一向に進まない。
ぶつぶつ文句を言いながら、さっき消したときに出た消しカスを床に落とす。
不意に茜が立ち上がった。そして勉強道具を小脇に抱えて図書室から出て行こうとする。
「もう終わったんですか?」
なんとなく目に入って訊いてみた。茜はとくに気分を害した風もなく答えてくれる。
「黛先輩探そうと思って。前借りた参考書、返さなきゃいけないから」
27人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ