第十七話「IH〜決勝〜」 ページ17
決勝の相手は陽泉高校だった。赤司君の差し金か、紫原君は欠場だったけれど。
けれども陽泉は強かった。「イージスの楯」と呼ばれる程高身長の選手が多く、二年の氷室さんは思わず見入ってしまうような美しい、全く無駄のないフォームで薄ら寒い恐怖を感じたものだ。
優勝カップを受け取り、赤司君は今取材を受けていた。残りの面々は隅の方でいそいそと帰る準備中だ。
「あ、みっちゃん」
実渕さんが話しかけてきたので、持っていたタオルを適当にその辺の籠に突っ込んだ。
恐らくあとから茜と先輩にとても怒られるだろう。まあ、仕方ない。
「なんですか?」
「さっきの征ちゃんの話、聞いてなかったでしょ?明日から三日間特別に休みですって」
頭ごなしに決めつけるとは理不尽だと憤りつつ、現にその通りだったので頷くだけに留めた。
それに、教えてもらわなければ損をするところだった。どうせ葉山さん辺りは休みを貰おうと体育館に入り浸るだろうから、もし間違えて行けば延々とこき使われるところだった。
(でも、三日間も何しよう……)
急なことだったので、何も用事なんてない。
(久しぶりに里帰りでもしてみようか)
ついでに、久しく見ていなかったあの小煩い幼馴染の顔も見ておこう。
里帰りにはあれもこれも持って行こうと妄想を膨らませ、はたと何故自分はこんなに楽しみなんだろうと立ち止まった。
(それは、きっと……)
あの幼馴染に逢えることが嬉しいからだ。
私の、“元”好きだった人に逢えるのが。
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