拾って (紫)

04 ページ4

何言ってるんだこの人。



今までろくな女と出会ってこなかったんだな、可哀想に。



お金は無いから体で払おうって？




『あいにく、そういうの求めてません』



深｢え、ほんと？｣



近づいていた顔は一瞬にして離れ、深澤さんは驚いて後ずさった。



そんな女しか相手にしてこなかったのか…。



まあ、ただで家に男を泊める状況なら


私の方がおかしな考えなのかもしれない。



『そんなの良いので、私に迷惑をかけないって約束してください』



深｢泊まるのはいいんだ？｣



『最大限の譲歩です…』



1度承諾したことは取り消さないに限る。



会社に電話でもされたら困るし。




深｢なんて呼べばいい？俺のことはふっかでいいよ｣



『A、でいいです』



深｢じゃあAね｣



『話聞いてました？』



深｢あと敬語やめよ？そんな歳変わんないでしょ。俺28｣



『なんだタメか…』



この歳でヒモならもう一生ヒモだ。



いやでもお金は大丈夫って言ってたな…。



何が目的で居候しようとしてるんだろう。





深｢Aご飯食べようよ、俺ラーメンがいい｣



『居候の分際で要望が通るとでも？？』



深｢辛辣だな！｣



『私の家だし』



深｢ほら、ふっかさんカッコイイじゃん？だからもっと優しくしてやってよ｣



『………』



深｢おい！なんか言ってくんない！？｣



『うどんにしよ…』



深｢A〜｣




人と距離を詰めるのが上手すぎる。



気づけば深澤さ…、ふっかのペースに乗せられてるのに、話していて心地がいい。





深｢拾ってくれてありがとね、A｣



そう言ったふっかの顔は笑顔なのに、どこか影があった。

05→←03

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す