《大型コラボ》十人十色のバレンタイン《歌い手》 (ページ31)

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《不器用な王子様》あほの/となりの坂田ページ31

「ね、ねえ、Aー？今日って何日ー？」

分かりやすく動揺して私にたずねてくるさかたん。
そう、今日は2月14日。巷ではバレンタインデーだなんだ騒がれる日なのだ。
もちろん、チョコは作ってある。……二回失敗したなんて、絶対に言わないけど。

「2月14日、だよ。どうしたのー、スマホでも確認すれば見れるのにー」

あ、そうやっけー、なんて言って少ししょんぼりしている様子。
戸惑いながらこっちを見て口を開いたかと思うとまた口を閉じて真っ赤な顔で下を向く。
……さかたん、他の人からもいっぱいチョコもらってたはずなのに。
少し、他の人に嫉妬……なんて。

「ねえ＿＿」

私とさかたんの声が重なる。
なぜか異様に恥ずかしさを覚えて、顔に熱が集まる。

「ど、どうぞ」
「いや、Aから、どうぞ」

二人の視線が絡まり、思わずふふっと笑いが溢れる。
さかたんもつられて笑い出す。部屋全体がいつもの明るさに包まれた。

「________ね、さかたん」
「……なんですか？お姫さま」

わざとらしくひざまずいて手を取って笑って見せる彼。
いつも見ている幼さとは違う。余裕の表情を見せる、大人な雰囲気のさかたんだった。
……馬鹿さかたん。変に、意識しちゃうじゃん。
どこかあどけなさを感じる不敵な笑みを私に向けていた。

「……！？」

そしておもむろに首元の服をつかみ、触れるだけの……
……キス、をした。
さっきの光景が目に焼き付いて離れない。
さかたんも少し俯いて、手だって触れたり、離れたり。
私が好きになったのはこういうところなのだろうか。
素直で純粋なところ。時折見せるいつものおちゃらけた雰囲気とは違う真剣な横顔。
誰にでも声をかける、お人好しで優しいところ。前向きで明るいところ。

……全部、全部、好きなんだ。大好きなんだ。

「チョコ……作ってきましたよ。____王子様！」