流し込む ページ13
.
『ごめん葛葉、遅くなった』
先に席を取っていた葛葉の元にようやくローレンから解放された私が疲れきった表情を浮かべてドリンクを運び終えた。すっかり疲弊しきった私を見て、
「いや、別に良いけど…ってか、どうした？何かすげぇ疲れてない？」
かなりの時間ここで待ちぼうけをくらった筈なのに、どうやら怒るよりも心配が勝ったようで、葛葉は手に持っていたスマホゲームから視線を上げると、眉間に皺を寄せながらそう言った。
『あー、実は、さっきそこでローレンに捕まって。そこから何か、話が長引いちゃって…』
「は？なに、お前とローレンって前からそんな仲良かったっけ…？」
『や、ちゃんと喋ったのは昨日が初めてなんだけどね…』
「だよなぁ。えっ？お前、まさかローレンとマジで付き合う事になったとか…」
『は？無い無い！やめてよ、また変な事言うの…』
さっきのローレンと同じ反応を葛葉に返され、おいおいマジかよ。みたいな顔で疑惑を向けられたのでこちらも再度全否定してブンブンと顔の前で手を振れば、
「俺さぁ、あんまこういうの言いたくねぇんだけど、マジでローレンだけは止めといた方が良いぞ。俺、お前がローレンに傷付けられて泣いてるとこ見たくねぇわ…」
『待って、何か可笑しくない？なんで私が傷付けられる前提で話してるの？』
「いやだって俺、今までアイツが真面目に女と付き合ってんの一回も見た事ねぇよ？だいたい何時も寄ってきた女と遊んで飽きたらポイの繰り返しっつーか、マジでクソみてぇな付き合いばっかしてんだよ、ローレンは…」
淡々とローレンの女癖の悪さを語りながら、カフェオレにシロップを追加する葛葉の手元をぼんやりと眺めて、溜め息を溢しつつ…
『へぇ、そうなんだ…』
(何となくそんな気もしてたから特に驚きはしないけど)
と、これまでのローレンとのやり取りを思い出して何処か納得してしまう自分が居た。
だって、これまでローレンから言われた台詞には何処か本気で言われてる感じが無いというか、言葉の重み、みたいなのを一切感じられなかったから。
しかも、何処からが
「とにかく、ローレンはそういう奴だから。頼むからローレンにだけは惚れんなよ？」
『…はいはい。私だってその辺はちゃんと分かってるって』
「ホントかよ…。ったく、俺はちゃんっと警告したからなー？」
仲の良い友達の葛葉にそこまで言われるほどローレンは本当に女癖が悪いのか、私は何も知らないから分からないけど…
昨日のローレンのコミュ力の高さとか優しい声色で話かけてくる姿を思い返せば、納得で。確信犯でやってるとしたら罪深い男なのは間違いない訳で…
『本当に分かってるから、大丈夫…』
もう既に少しずつローレンの仕掛けた罠にハマりかけてるくせに、ギリギリまで抗おうとする往生際の悪い自分に苦笑いを浮かべながら、すっかり氷の溶けきったレモンティーをストローでカラカラと回して。
自分の中で芽生え始めた気持ちをレモンティーと一緒に喉の奥へと押し流んだ。
.
続く
お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←そこに希望はあるのかい
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 506人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やよい(プロフ) - realさん» ありがとうございます(˶' ᵕ ' ˶)閉店事件なんかすごい好きなんですよね。笑 同じ感覚の方が居てホッとしました。これからも頑張りますね！ (10月7日 8時) (
レス) id: 65ead64792 (このIDを非表示/違反報告)
real(プロフ) - めっちゃ面白いです！わたしもlrnの閉店事件好きなので嬉しいです！更新楽しみにしてます(*^^*) (10月4日 21時) (レス) id: 3d1cb866c0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：やよい
| 作成日時：2023年9月26日 20時
