【銀魂】隣には、【高杉晋助】

ごめんね ページ32

…胸の中で、ずっとくすぶっていた言葉を、今ここで漸く口にすることが出来た。思いの丈を、伝えることが出来た。……いや、きっと、伝えられたとしても、そのすべてを伝えきることは出来ないのだろう。いくら言葉を選んで並べても、そのすべてを音にすることなんて出来やしないのだ。

…言葉なんてものは、音にしたら嘘臭くなってしまう。けれど、それでも、言わなければ伝わらないものもきっとあると思うのだ。俺は、そう信じている。腕の中にいる彼女に、抱き締めている彼女に少しでも、何かが伝わることを信じている。


『傍にいてほしい』


……その言葉は紛れもない俺の本心で、嘘偽りなんてなくて。心からの俺の想いであり、願いだった。


……ただそれだけで構わないから。


「……晋、助…ッ…」

「…ん」


……苦しそうに、痛みを堪えるように俺の名前を呼ぶA。彼女を包む腕に少しの力を込めた。消えてしまわぬように優しく、傷付けてしまわぬように慎重に、逃がしてしまわぬように、強く。

その彼女の声に、胸が痛む。けれど、俺はその声を聞かなければならない。真っ向から向き合って、受け止めなければならない。もう、逃げたくはない。


「……わ、たし……どーしようもないの…」


……震える声で、Aは言葉を紡ぎ出した。泣き声でも、途切れ途切れでも、それはちゃんと俺に届く。


「ワガママだったんだよ……私、どーしようもなくワガママだったの……晋助のこと、分かってたはず、なのに……ッ、ぜんっぜん分かってなくて…」

「うん」

「……晋助の気持ち、知ってたのに、それなのに私、逃げたんだよ……晋助の気持ちを踏みにじったんだ…！！」


……そんなことない。
……逃げたのは、俺も同じだったんだ。


「…どーしようもなくて、しょーもなくて、不甲斐なくてワガママで……ホントに自分のことしか考えてなくて……ダメな奴だけど、でもね……」


……私、と。Aは俺のスーツを握り締めて言う。


「……どーしようもなく、晋助が好きなままなの…」


…ごめんね、ごめんね、大好きなの、と。

自分から別れようって言い出したのにごめんね。

自分勝手でごめんね。


ごめんね、ごめんね、と。何度も何度もAは言った。


それでも、俺が好きなのだと。泣きながらに、そう言った。

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