分かってた ページ26
「……最低だよホント……分かってたんだよ。全部」
「……全部分かってたのに、…私、何も分かってなかったの」
…寂しい。そんなのは、私のただのワガママだった。仕事で忙しくて、大学の時みたいにはいかなくて、中々会えなくて、けれどそれでも、私は彼ことを応援しようと思っていた。寂しくたって、彼の背中を押せるなら、それでいいと。なのに、私はやっぱり、自分のことしか考えてなくて。
……結局は、自分のことを優先させた。逃げたのだ。全部を、彼のせいにして。
……分かってた。彼が私に、寂しい思いをさせようとしていた訳ではないということも。
……分かってた。彼が心から、私のことを愛してくれていたことも。
……分かってた。『さよなら』なんて、本当は言いたくなかったってことも。
「……私なんか、……坂田くんにも彼にも、想って貰える価値なんて、ないんだよ…」
……全部分かっていながら、彼から逃げた私には。
……私のことを見つめてくれる彼を、晋助に重ねてしまった私には。
…そんな価値なんて、ないのだ。
「それは…、」
「でも、」
…そんな私の言葉を聞いて、坂田くんは何かを言おうとしていた。けれど、それを遮って、私は口を開いた。カップに漂うミルクティーに映る、歪な顔をした自分を見つめて。カップをキュッ、と握って。どうしようもなく詰まりそうになる声を、なんとか絞り出す。
「…それでも……好きなの、彼のこと…」
…自分から別れを告げておいて、勝手な話だけれど。酷い女だと思うけれど。でも、それでも、私の中の彼は、晋助は、ちっとも消えてくれないから。離れても、別れても、彼への気持ちが、全然薄れてくれなくて、空いた穴が、元通りに埋まってくれなくて、苦しくて。
気づけば私の目からは、涙が伝っていた。ポタポタと、服に染みを作っていく。
「……ごめんなさい……私、こんなんでも、まだ晋助が好きなの…」
「…A、」
…溢れて、溢れて、止まらない。
嗚咽混じりに泣く私の名前を、坂田くんは呼んで、そうして、「泣くなよ」と呟いた。
「…可愛い顔が台無しだから、な?」
と、彼は自分の服の袖で、私の涙を拭ってくれた。クリアになった視界に、坂田くんの優しげな微笑みが見えた。
こんな私にも、そんな優しい笑顔を、彼はくれた。
「…それと、」
坂田くんは少しだけムッとして続ける。
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ピピコ(プロフ) - 返信が遅れてしまいごめんなさい!!すずさん!ありがとうございます!高杉さんオチ現パロということで、難しいところもたくさんありましたがそう言って頂けるなら書いて良かったなと心から思えます!こちらこそ、素敵なコメントをありがとうございました!! (2018年4月11日 15時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - あああああ!!ほんとにキュン死しそうでした!!(〃ω〃) 素敵な作品と私を出会わせてくれて、ありがとうございます!! (2018年3月21日 4時) (レス) id: 243c6c39f4 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 紫音さん» 紫音さん!ありがとうございます!!感動して頂けましたか…!?切なく甘く、を目標に頑張りました!!初めての高杉さんだったので、試行錯誤しながらでしたが、お楽しみ頂けていたなら嬉しいです!!最後まで読んでくださり、ありがとうございました!! (2017年11月24日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 月猫さん» 月猫さん!いつもありがとうございます!叫びたくなりましたか…!初めての高杉さんのお話で、うまく書けているか不安しかないのですが、お楽しみ頂けたなら幸いです!また高杉さん書けたらいいなと思ってます!最後まで読んでくださり、ありがとうございました! (2017年11月24日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 完結おめでとうございます!とっても感動しました! (2017年11月24日 5時) (レス) id: b88bd76db6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年8月24日 16時