ケリ ページ24
Aside
……断ち切らなければならない。
『仕事が終わったら、何処かで会えませんか?』
……仕事を休んだ。ここ最近、彼のことを考えないように仕事ばかりに熱中していたから、有給休暇を使うのは酷く久しぶりなような気がした。一日中、私は自室の天井を仰ぎ見ながら、色んなことを考えていた。晋助のこと、坂田くんのこと、私のこと。
……ずっとこうして、ウジウジしている訳にはいかない。彼が私の隣に居なくても、変わらず世界は回っていくのだ。同じ場所で足踏みしている間にも、時間は刻々と進んでいき、私を置いていく。いつまでたってもこんなんじゃ、ダメだと思った。
……ケリをつけるんだ。
*
「おう、悪りィな」
待ったか、と。仕事を終えて来てくれた坂田くんは言う。少し寒くなってきた今日この頃。待ち合わせた時計台の前で、私は彼の言葉に首を振る。
「調度、今さっき来たところだよ」
ごめんね、疲れてるとこ、と。謝れば、いいって、と彼は笑ってくれる。昨日、まさかあんなことがあったなんて、端から見たらきっと分からないだろう。もしかしたら、恋人か何かにも見えているかもしれない。そう考えると、苦笑が漏れてくる。
「メールなんて珍しいな」
「うん……あのね、」
……話したいことがあるの、と。そう言った私の声は、情けなくも少し震えていた。
……近くにあったカフェに入った。何度か、晋助とも来たことがあるお店だった。彼はいつもここに来ると、必ずと言っていいほど、ブラックコーヒーを注文した。私はいつも、ミルクティーを注文する。
坂田くんはお店に何故か奇跡的にあったいちご牛乳を注文し、私は例に漏れずミルクティーを頼んだ。暫くすると注文したそれらがテーブルに届けられ、「ごゆっくりどうぞー」と愛想のいい笑顔を向けて店員さんは去っていった。
「…ここ初めて来たけどいいな。また来ようかな」
「それはよかったね」
…どうして今日、会社を休んだのか。坂田くんは気を使っているのか、それとも、昨日のことを気にしているのか、はたまた、勘づいているのか。わからないけれど、そのことに関して聞いてこないのはとてもありがたかった。
ミルクティーを一口飲み、坂田くんもいちご牛乳を口に含む。そして、口を開いた。
「…で、話ってのは?」
探りを入れるように、坂田くんは私にそう問い掛けた。私は「……うん」と呟き、カップをソーサーの上に戻した。
84人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ピピコ(プロフ) - 返信が遅れてしまいごめんなさい!!すずさん!ありがとうございます!高杉さんオチ現パロということで、難しいところもたくさんありましたがそう言って頂けるなら書いて良かったなと心から思えます!こちらこそ、素敵なコメントをありがとうございました!! (2018年4月11日 15時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - あああああ!!ほんとにキュン死しそうでした!!(〃ω〃) 素敵な作品と私を出会わせてくれて、ありがとうございます!! (2018年3月21日 4時) (レス) id: 243c6c39f4 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 紫音さん» 紫音さん!ありがとうございます!!感動して頂けましたか…!?切なく甘く、を目標に頑張りました!!初めての高杉さんだったので、試行錯誤しながらでしたが、お楽しみ頂けていたなら嬉しいです!!最後まで読んでくださり、ありがとうございました!! (2017年11月24日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 月猫さん» 月猫さん!いつもありがとうございます!叫びたくなりましたか…!初めての高杉さんのお話で、うまく書けているか不安しかないのですが、お楽しみ頂けたなら幸いです!また高杉さん書けたらいいなと思ってます!最後まで読んでくださり、ありがとうございました! (2017年11月24日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 完結おめでとうございます!とっても感動しました! (2017年11月24日 5時) (レス) id: b88bd76db6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年8月24日 16時