苛立ち ページ20
「…シンスケ、今日ちょっと変だもんね?」
「……」
…その純粋そうな、青い目は何でもお見通しだとでも言うつもりだろうか。もしかしたら、今俺が思い浮かべている事柄さえも全て見透かしているのかもしれない。「実は俺、人の心が解るんだ」なんてことを言われても、頷けてしまえる気がした。
「……無言は肯定と取るけど、いいかな?」
「……知るか」
フン、と鼻であしらってやるも、ソイツは笑っている。まるで、新しいオモチャを手に入れた小さなガキのような笑みだった。そこまで純粋な笑みでないことは確かだけれど、そう表現するのが一番近いような気がする。
「シンスケがそんな調子になるなんてネ、原因は何だろう?」
「さぁな」
「女?」
首を軽くかしげては、俺の顔を覗き込む。口元はニタリ歪めらている。膝の上で頬杖をついて、俺を見上げるような姿勢になっているソイツに、俺は視線を向ける。鋭いものになってしまうことは無理もないとする。
「……、もう用がねぇなら帰るぞ」
「怒らないでよ、てか、当たり?」
もう分かりきっているくせにそう言ってくる辺りが更に苛立つ。舌打ちを隠さずにしてやれば、「おぉ怖い怖い」と肩を竦める。
「ごめんね、俺デリカシーっていうの?ないんだよね〜」
デリカシー?何それ美味しいの?と、演技じみた動きで腕を広げる。それに返事をすることすら億劫で、俺は黙ったままコーヒーをまた一口飲む。染み込んでくるような苦味。神威は砂糖を入れたコーヒーを飲む。
「シンスケをそんな風にしちゃう女ってどんななんだろうね」
ちょっと興味あるかも、と。おちゃらけたように言う。
「そんなに睨まないでよ」
どうやら俺は無意識にまた睨んでいたらしい。苛立ちが募っているのは自覚しているが。
「……大方、別れたんでしょ」
「…」
「でもシンスケはまだ割りきれなくて、一人でウジウジしてる」
「うるせぇ」
「そんなにその子が大事なら、早くヨリを戻すなり何なりすればいいの…」
「黙れっつってんだろ」
コーヒーカップを少し乱暴にソーサーに戻した。カチャンッ、という音が部屋に響き、神威の声を遮った。
「…だって、図星でしょ?」
…何処か嘲笑うように、ソイツは言った。コイツの目に映っている俺は、きっととても滑稽に見えているのだろう。
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ピピコ(プロフ) - 返信が遅れてしまいごめんなさい!!すずさん!ありがとうございます!高杉さんオチ現パロということで、難しいところもたくさんありましたがそう言って頂けるなら書いて良かったなと心から思えます!こちらこそ、素敵なコメントをありがとうございました!! (2018年4月11日 15時) (レス) id: f6c7f9fb7e (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - あああああ!!ほんとにキュン死しそうでした!!(〃ω〃) 素敵な作品と私を出会わせてくれて、ありがとうございます!! (2018年3月21日 4時) (レス) id: 243c6c39f4 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 紫音さん» 紫音さん!ありがとうございます!!感動して頂けましたか…!?切なく甘く、を目標に頑張りました!!初めての高杉さんだったので、試行錯誤しながらでしたが、お楽しみ頂けていたなら嬉しいです!!最後まで読んでくださり、ありがとうございました!! (2017年11月24日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
ピピコ(プロフ) - 月猫さん» 月猫さん!いつもありがとうございます!叫びたくなりましたか…!初めての高杉さんのお話で、うまく書けているか不安しかないのですが、お楽しみ頂けたなら幸いです!また高杉さん書けたらいいなと思ってます!最後まで読んでくださり、ありがとうございました! (2017年11月24日 23時) (レス) id: 0ec549c041 (このIDを非表示/違反報告)
紫音(プロフ) - 完結おめでとうございます!とっても感動しました! (2017年11月24日 5時) (レス) id: b88bd76db6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ピピコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/pipiko1030/
作成日時:2017年8月24日 16時