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落下 ページ3

あっ、と声を出す間もなくわずかな浮遊感と共に重力に従って落下していく。
このまま地面にぶつかったら死ぬんじゃないだろうか。マンホールの中なんて見たこともないけどそういえば落ちて死んだなんて話小説で読んだことがある。せっかく彼女が出来たのに残念。交換した連絡先を活用出来もしないまま終わるなんて勿体ないな。
助かる方法を考えるだけの余裕を持つことは叶わず、全く関係の無いことばかりが頭の中を駆け巡る。思わず目をぎゅっと瞑るが数秒経っても予想していた衝撃は訪れなかった。地面の硬い感触ではなくふわっとした柔らかい何かに触れる。驚いて目を開くと尻の下には高そうなクッション、そして目の前には無機質な下水道などではなく明らかに人工的に作られたであろう部屋。
正方形のあまり広くない部屋の中にカウンター、奥には小瓶が幾つも置かれている。薄暗い証明も相まって妖しげな雰囲気だ。
「何、ここ……」
誰ともなしに呟く。
「ここは店だよ。記憶を扱う店」
本来ならマンホールの中に人なんているわけがないのに、疑問に答える声が聞こえた。そもそも本来なら、というのであればマンホールの中に部屋があることなんてこともないのでこれくらいのイレギュラーはあって然るべきなのかもしれない。
「店からなにか落ちた音が聞こえたから見に来てみれば人か。歩く時は足元くらい見てほしいものだわ」

店→←雪



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作者名:志久真 | 作成日時:2019年6月18日 1時

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