紫の偏執7 ページ37
……さて、何から話そう。
一松君を商店街の外れにある公園のベンチに座らせて数分、私は彼の前で仁王立ちしていた。
一松君はまるで死刑宣告を受けたかのような顔をしている。
ちょっとこの態勢は威圧感があるかな？
……いや、少し心が痛むけどここは彼にハッキリ分からせるべきだろう。
『ねぇ、一松君』
｢っ！｣
一言名前を呼んだだけで彼はビクッと体を揺らし、一層顔を青ざめた。
『…一松君は何でそんなに自分を低く見てるの？』
"おれなんかが"
"こんなクズが"
よく彼の口から出る言葉。
もはや口癖とも呼べるそれは、彼の強い自己否定感を表していた。
｢……別に、これは正当な評価だから。｣
正当な評価…
一松君の顔を見る限りこの言葉に偽りははなそうだ。
ということはつまり、彼は本気で自分を下の存在だと思ってるということ。
『…どうしてそう思うの？』
｢ハッ、そんなの言わなくても分かるでしょ。二十歳過ぎて大人になっても働かないし、彼女は愚か友達すらいない。
同じ歳のやつなら既に働いてるのが当たり前。結婚してるやつだっている。それに比べておれはニートだし童貞だよ？
…やっぱり普通こんなクズとは友達になりたくないよね。おれには良いとこなんて一つもないし。
…これで分かった？おれはただ客観的に見て自分がどんだけクズであるかを評価してるだけ。アンタが気にかけるような存在じゃないんだよ。｣
なるほど
『つまり一松君は人と自分を比べてああだこうだ言ってる訳だね』
｢……｣
『そして自分には良いところが一つもない、と』
カラ松君っぽく言うならとんだネガティブボーイ、だな
｢おれは何も間違ったことは言ってない｣とでもいいたげな顔に焦れったさとイライラが体を駆け巡る。
『……一松君は良いところいっぱいあるよ。』
ジト…と相手を静かに窺い、そしてどこか疑っているような目。
普段なら彼のこの底が知れないような目に、少しの不安や恐怖を覚えていただろう。
でも今はそんなこと微塵も感じない。むしろ、あなたは間違ってると胸を張って言えるくらいだ。
『じゃあ私が一松君の良さを順番に言ってあげるねっ』
言いながら彼の隣に座る。
顔を見ながら話すのはちょっと気恥かしい。
『まず、一松君は面倒見がいいよね』
｢……は…｣
『野良猫の面倒見てるし。最初びっくりしたんだよね〜、私以外にも野良猫の面倒見てる人いたんだって』
｢…だからってマトモな人間とは限らないでしょ。｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 305人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「逆ハー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
milk - 本当に面白い！！この作品は完結がもの凄く気になります…！！続き待ってます！！ (2022年8月26日 22時) (
レス) @page47 id: 1d931b58b6 (このIDを非表示/違反報告)
あい(プロフ) - 続き待ってます (2022年8月18日 17時) (レス) @page47 id: 4bcda9126d (このIDを非表示/違反報告)
一樺(プロフ) - 続き凄く見たいです…もう更新されないんですかね？？ (2020年11月28日 16時) (レス) id: e734b1c435 (このIDを非表示/違反報告)
星猫(プロフ) - 続き見たい早く気になる (2020年11月14日 16時) (レス) id: 7ce7f2c2ab (このIDを非表示/違反報告)
Nori(プロフ) - なり金さん» 再びコメントありがとうございます(*´ `)小鳥が飛び立ったシーンでしょうか？差し支えなければ教えてください…笑カラ松パートでの課題はカラ松語なんですよね。未だに分からない笑 (2020年6月23日 16時) (レス) id: f050346503 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Nori | 作成日時：2020年3月10日 17時
