「カゲプロ」赤い金魚。「カノ」

＊思い出。35 ページ35

１分１秒でも君と長く居たいから


楽しい思い出をたくさんつくりたいから


僕は今日も病室に来る。


コンコン


ノックをするのは何度目だろうか


「A、入るね。」




また、より一層

細くなって


白くなって


元気がなくなって


今にも体を支えてる糸が切れそうで



胸が痛む。






どうして、いつもの「カノ！！！」僕を呼ぶ声が聞こえない＿＿＿？



刹那、君から出てきた言葉は


「だ、れですか.....。」




「え...？」


自分の口から間抜けな声が漏れた




「A、冗談よしてよ。笑えないよ？」


本当に。

冗談よしてよ？



また、元気に「騙された〜！！！」って笑うんでしょ？



そんな僕の考えはすぐに潰れた



「どうして私の名前....」



君は僕の名前を覚えていないのだろうか。

僕の存在さえも＿＿＿＿＿




いや、Aは僕の事忘れたりなんかしないさ。


ちょっと、疲れているのか

寝ぼけているんだよ。


「ホラ、Aの彼氏のカノだよ？」


これで駄目だったら


なんと言ったら良いのだろうか。







数秒経った今

君はぱっと表情を明るくして



「あ！カノ！！今日も来てくれたの？」




こういう時はどんな表情をしたら良いのだろうか。



君は僕を見ないで

どこか遠くを見ているね。



大丈夫。信じてるよ？


君は誰一人仲間の事を忘れてないって。




大丈夫だから、泣きそうに何かならないで。




「当たり前でしょ。」


やっと言葉を口にしたと思ったらこんな言葉。


だから


ただひたすら君を抱きしめる事しか出来なかった。





そんな君は涙出てきそうになったのを必死に耐えて



でも涙は、瞬きなんてしなくても溢れてきて







君は＿＿＿＿＿＿静かに泣いた。

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