【名探偵コナン】世界はあなたの色になる。【から紅の恋歌】

□２４． ページ25

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『得意札？』



ホテルに戻ると、並べられた札を見つめながらも真剣そうな顔つきで悩んでいた和葉ちゃん。

静華さんに試合に勝つには得意な札を選ばなきゃダメだという宿題を出されたとかなんとか。




「これぞって札が決まらへんねん…」

「そんなに悩むことかなぁ」

「え？」


蘭が軽い口取りで言ったのに対して、私も思わず目を見開く。



「百人一首って、恋の歌が多いでしょ？勝負とかそんなこと考えないで、ピンとくる好きな歌選べばいいと思うけどな」

「恋かぁ…」



ぽつりとそう零して札を見下ろす和葉ちゃん。

蘭の言う通り、百人一首は恋の歌が多い。
どこか切ない片想いを詠っているのもあれば、熱い想いが込められているのもある。


…そこまで深く考えなくていい。

蘭の言葉はご最もだ。



「私なら、これかな」

「めぐりあひて…、紫式部やな」


蘭が指した札は、紫式部の“めぐりあひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな”という歌。



「せっかく会えた友達が、あっちゅう間に帰ってもうたって歌やけど…」

「うん。Aも新一も、やっと会えたと思ったらすぐどっか行っちゃうから。…こっちは話したいこといっぱいあるのにさ！」

『蘭…姉ちゃん、』



そんな不満を零しながらも、蘭の表情はどこか生き生きとしていて安心する。

ごめんね蘭。
いつか私たちが元の姿に戻れたら、いっぱいお話しようね。




「そやね、そんならあたしは…」




ぐるりと札を探すように見る和葉ちゃん。

私はふと1枚の札が目に入った。




『「───しのぶれど、」』




確かに重なった私と和葉ちゃんの声。
驚いたようにこちらを見る彼女に、私はふにゃりと笑ってみせた。



『隠しても、隠しきれない恋の歌…、和葉姉ちゃんにぴったりだと思うよ』


ね、蘭姉ちゃん。

そんな思いを込めて蘭の方を向くと、蘭もまた優しく頷いてくれた。

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