【名探偵コナン】世界はあなたの色になる。【から紅の恋歌】

□２３． ページ24

「あ、そういえば…」



蘭は連絡先を確認したくてパスケースの中を見てしまったことを紅葉さんに告げた。

…写真のことも。



「あ、もしかしてこの写真のことですか？」


彼女がパスケースから出したのは、幼い頃の紅葉さんと男の子の写真。



『紅葉さん、この男の子って…』

「平次くんです」

『やっぱり…』



蘭と顔を見合わせてそう呟く。
紅葉さんが言うには、これは子供の頃に出たカルタ大会での写真らしい。


「平次くんは、負けて泣いてたウチに言うたんです。“泣くなや、今度会うたら嫁にとったるさかい。待っとれや！”……って、」

「ええ！！」



───ほ、本当にプロポーズだったんだ。

驚いて声も出ない私と、頬を赤らめている蘭。



「せやから、平次くんはウチの未来の旦那さんです」

「で、でも…子供の頃の約束だから…」

「子供も大人もあらへん！男が1度口にしたことはそう簡単に曲げたらあきまへん！…ちゃいますか？」



ピシャリとそう言いきり紅葉さんに押されたような表情をした蘭は、一瞬何かを考えた表情をして「ですよね…」と口にした。

…蘭？



「“瀬をはやみ 岩にせかるる滝川の われても末にあわんとぞ思ふ”…、身は離れていても、心は繋がってるって信じてましたのに…」



切なげにそう零した紅葉さんの瞳に涙が浮かぶ。

ズキン、と胸が痛む。

私なら…どうだろう。
もしも新一の隣に他の女の人がいたら、紅葉さんみたいに胸を張って好きだと言えるだろうか。

…それとも、逃げちゃうかな。


今日1日、顔を見れなかっただけでこんなにも気分が上がらないなんてまだまだお子ちゃまなのかもしれない。



「葉っぱちゃんに伝えといてください」

「は、葉っぱちゃん？」

「ウチは狙った札は誰にも取らせへん。そう先生に教わってきたと」




狙った札。

服部くんのことなのか、それとも得意札の話なのか。…きっと両方の意味なんだろうと、私は頭の中で整理した。


私も、そろそろちゃんと言わなくちゃ。

□２４．→←□２２．

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す