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綾辻先生の言い分を右から左へ聞き流し、ソファから立ち上がろうとする。
すると、思ったより簡単に髪から手が離された。
その代わり腰回りに腕がまわされて、グッと後ろに勢いよく引っ張られる。
「うッ……!?」
当然バランスを崩した私は、為す術もなく倒れ込む。着地先はまさかの先生の膝上。
まわっていた腕はそのままで、私が勝てるかどうかの絶妙な力加減で抱きしめられた。
借りてきた猫状態の私を余所に、珍しく薄い笑みを浮かべる先生は満足そうに私の髪を梳く。
「ふぅ、大丈夫そうですね。お預かりしま、!?」
「どうした辻村君。自称ミステリアスな女が台無になる前に落ち着いたらどうだ」
は、え?と狼狽える辻村に、綾辻は面倒そうに彼女を見やった。
力を込めたことで皴が入っている報告書を顔の前に掲げ、隠せていない瞳でチラチラと此方の様子を窺っている。
その顔は真っ赤で見ているこっちが恥ずかしくなりそう。
「辻村さん、助けてください。今すぐ坂口さんに報告して接触禁止令を出してもらいに行きます」
「え、坂口先輩ですか?この時間だと本部に居るかな……」
「居ても居なくても何方でも良いのでとにかく助けてください」
切実にひたすら助けを求めてみた。←
同じ台詞を連呼していると、私の身体を閉じ込める拘束がきつくなった。
距離もグッと近くなり、横を向くと目と鼻の先には冷気を纏う先生の精巧な顔。
最早見慣れた感情のない
「というか自称って何ですか自称って!?周りからはミステリアスな女で通っている、と前に云ったじゃないですかッ!!」
「探偵としての観察力を持っている、と以前云っただろう。俺には自称にしか見えない。それに呆けている暇があるなら、さっさと本部に戻って仕事をしたらどうだ?また徹夜をしたくなければな」
"徹夜"という先生の言葉で顔色が真っ青になった辻村さんは、持っていた報告書を書類ケースに入れて、それを鞄の中に突っ込む。それから手早く荷物を纏めて肩に背負った。
「では失礼します!Aさんはお帰りに___じゃ、邪魔しないでおきますっっ」
氷柱のような鋭い視線が突き刺さり、言い淀んだ辻村は今度こそ逃げるように事務所から出て行った。
絶対零度の視線を向けたであろう先生に私は溜め息を零した。
「先生、私も辻村さんと一緒にお暇したいんですが。彼方の手間が省けますし」
「なら泊まればいい。彼方の手間も省けるし客室も空いている」
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雪見だいふく - このシリーズ大好きなので、続編書いて欲しいです!リクもさせていただきたいので、よろしくお願いします! (2021年10月22日 18時) (レス) id: 0b9e52d702 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 続編をお願いします! (2021年10月21日 22時) (レス) @page49 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - すみませんゴーゴリのヤンデレは…… (2021年10月5日 1時) (レス) @page45 id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
琉流 - 上手だと思いますよ、棒人間しか書けない私にとっては羨ましいです。 (2021年8月26日 1時) (レス) id: 45a1f0a151 (このIDを非表示/違反報告)
みかん(プロフ) - フョードルの制裁論お願いします (2021年8月22日 7時) (レス) id: 68ec6172c9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ハル | 作成日時:2021年2月22日 21時