震え、記憶。 ページ21
ホイッスルが鳴り響き、皆の、雷門の歓喜の声が波間の向こうで呼応する。
重く、遠く、深く、響く。
秋が、音無さんが、雷門さんが、皆が歓喜してる。
私も嬉しいはずなのに、足の指先から全身へ、血の気が引いていく。
言いようのない恐怖心が体を強ばらせていく。
わかんない、けど、確かに…怖い。
ベンチから立ち上がることも、声を振るい出すことも出来ないまま、レーゼの言葉に、立ち込めた黒雲に…響いたあの人の声に……。
私は、ただ、震えて。
「お前達は知らないんだ…。本当のエイリア学園の恐ろしさを。我々はセカンドランクに過ぎない。我々の力などイプシロンに比べれば…」
い、ぷ……しろん。
「無様だぞ、レーゼ」
怪しい紫の光の中、現れたまた別の宇宙人。
その人を、レーゼは「デザーム様」と呼んで、恐れた。
「覚悟は出来ているか?お前たちを追放する」
「だっ……!!」
だめ。止めようと手を伸ばせば、足に力が入らなくてベンチから崩れ落ちる。
伸ばされた手の先、レーゼと目が合えば、レーゼは笑った。
どうして、笑うの?
消え去った宇宙人に、消された宇宙人。
逃げろって、あの宇宙人から逃げろって事なの?
それならレーゼは、あの宇宙人はどうして私に逃げろなんて言うの。
鈍器で頭を叩かれたような鈍い痛みが頭に響けば、
宇宙人じゃない、緑色の髪の男の子が泣いていた。
茶色い髪の可愛らしい男の子、綺麗な髪が自慢の女の子も、みんな、傷だらけでボロボロになって、泣いてる……。
『私達じゃ、イプシロンには勝てない』
『デザーム様には……敵わないんだ、』
『大丈夫だよ、皆。サッカーは楽しいって事忘れないで。ね、笑って。さ!サッカーしよう!』
皆を励まそうと一生懸命な女の子が身振り手振りで、ボールを蹴っても、肩を揺すっても、皆、俯いたまま。
その瞳に光はなくて。
『お願い!晴矢。私、あの子達の仇をうちたいの!だから協力してっ!』
『はあ?なんで?んなの、弱いアイツらが悪いんだろうが。お前もあんな奴ら構ってないでとっとと行くぞ』
『…晴矢…優しい、晴矢はもう……居ないの?』
もう、優しかった皆は居ない。
だから、私はあの日……。
「Aちゃん!Aちゃん!しっかりして!」
「……あ、き?」
体を揺さぶられて、瞬きをすれば、目の前には秋がいた。
「あれ…晴矢は…」
「はるや…?Aちゃん、大丈夫……?」
額を抑えて、あ、だめだ。意識を手放した。
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守羽(プロフ) - マナさん» コメントありがとうございます。すみません…手違いで先に続編を立ててしまった次第です。本日続編分まで合わせて更新するのでお待ち頂けたら幸いです。 (2022年8月19日 16時) (レス) id: d0d25ba477 (このIDを非表示/違反報告)
マナ - この話の続きが気になってますが、パスワードがかかっており話が読めないのですが…… (2022年8月19日 9時) (レス) id: dac527e381 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:楸 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/hisagi/
作成日時:2022年8月14日 14時