○夜鷹の星＿＿3 ページ20
嘘を嘘と見抜ける人は増えたのに、どうして嘘を嘘と愉しめる人が消えてしまったのだろう。
たぶん、五奇人が潰えた理由は、一見それほど関係のなさそうなそんな事柄とも結びついていたのだ。
「私、次のS2に出るよ」
ただでさえ冷たい空気が、いっそう鋭く凍りついたような気がした。
私は彼を見つめる。御伽話に出てくるような赤毛の魔法使い様と、視線を合わせて。
「……とうとう何も言ってくれなくなったね」
「そっちこそそんな意地悪を言うようになっテ、随分と偉くなったネ」
夏目の視線は咎めるようで責めるようで、けれど悲しそうだった。目を合わせているのがつらくなって、顔を逸らしてしまう。
「ボクの事、一人きりにするつもりなんダ」
「それは甘えだよ。周りを見ないで発言するのは控えたほうがいい。孤独っていうのはね、あんたが『にいさん』って呼ぶ人たちとか、私のためにある言葉だよ」
「──そっちだって、ボクのこと全然見てないくせに！！」
悲鳴のような夏目の声が、白い闇の中で反響する。
──なんで、なんで彼がそんな顔をする必要があるんだろう。一番辛いのは彼だろうに。誰より守られているくせに、守る側のつらさを知ってしまったら、ただ安心するだけじゃいられない。それは、地獄そのものだ。
けれど私は違う。
私は観客。幸福も絶望もくるしみもよろこびも、ただ文字列を目で追うだけのことに過ぎない。
「そんなに泣いたら魔法がとけちゃうよ」
「……最初から、ボクのことを置いてくつもりだったなんて」
「もともと同じ場所にいなかっただけだよ。私、そこには行けないし行くつもりないの。でも大丈夫、あんたの隣は、私じゃない別の誰かの方が相応しい」
光のような闇が深まり、私たちの帰り道が消えていく。お互いの背中は、きっともうじき見えなくなってしまう。
「──逆先、私、あんたのことが────」
もう誰も語らない。
ふたりだけの、
「だから、せめて最後くらいはちゃんとしなよ」
「……莫迦。また明日、会えるのニ」
「そのときにはもう違うでしょ。私とあんたはこれからも友達だし、何があってもそれ以上にも以下にもならない。そういう、魔法ってことにしといてさ」
「狡い人間だネ」
「魔法使いさんにそんなこと言われたんじゃ、叶わないわな……」
君を好きになって、永遠は終わった。
一つだけ手を振って光へ消えていくその背中に、手を伸ばすことは赦されなかった。
続く (更新停止中)
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月華 - 好きです。失礼しました (2020年9月19日 17時) (
レス) id: 561e3188bf (このIDを非表示/違反報告)
浅ヶ巳 - 瀬名さん» ありがとうございます！！！！！これからも精進していきますね！！！！！ (2020年9月10日 20時) (レス) id: 86116bbd22 (このIDを非表示/違反報告)
瀬名 - 好きです！ (2020年9月7日 23時) (レス) id: 86245055db (このIDを非表示/違反報告)
浅ヶ巳 - sakuyah1226さん» わーー！！！！ありがとうございます！！！自己管理も更新もがんばります！！！！！ (2020年9月7日 19時) (レス) id: 86116bbd22 (このIDを非表示/違反報告)
浅ヶ巳 - るるさん» ありがとうございます！！、！これからも更新頑張ります！！！！！ (2020年9月7日 19時) (レス) id: 86116bbd22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：浅ヶ巳 | 作成日時：2020年8月28日 21時
