【原神】月の命日 (ページ40)

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▷ ページ40

「柊朔……。」

「私は…貴方の愛を疑った。愛してると言うのに、私は貴方を信じてあげられなかったっ……！！」

思い返してみれば、私は過去も彼を信じてはいなかったのかもしれない。
一人で解決しようとして、呆気なく病にやられた。

あの時、彼を信じていたら……。

彼が私を救ってくれるということを、信じていれば。

「過去の事を悔やんでもどうにもならない。前に進め、柊朔。これから俺を信じてくれればいい。」

「っ！」

「恋とは気持ちを揺らす。お前が俺を疑ってしまう気持ちは分かる。……約束しよう。俺はお前を裏切らない。」

私は口を手で覆った。
膝から崩れ落ちた。

地面に落ちる雫。

私は、彼を愛しているんだ。心から。

「柊朔、俺は…」

「鍾離。私と、結婚を前提にお付き合いしてくれませんか。」

「……！」

ぼやけた視界で私は見上げた。
柊朔としてやり直そう。私はまだやり直せる。

鍾離は屈んで私と目線を合わせる。

「それは聞き入れられない。」

「……え。」

「数千年も待ったんだ。これ以上はもう待てない。柊朔、結婚しよう。」

その熱い視線から、目が離せなかった。
だが、その答えは既に決まった。

「はい……。」

「フッ…愛してる。」

私達は静かに唇を重ねた。

○●○

静かに寝息をたてる柊朔をジッと見つめる鍾離。
彼女が寝るまで、星を見ながら今までの事を話していてのだ。
この数千年間、なにがあったのか。

(ふむ……。このまま璃月に連れて帰るか？だがこれで帰ったら彼女が悲しむだろうか。旅をしたいという彼女の気持ちを尊重するべきか。)

鍾離は悩んでいた。
このまま旅をさせるか、璃月に帰らせるか。

(俺も旅に同行すればいいのか。これで安心だな。)

本人は気づいていない。大事なことに……。

彼は立ち上がった。
そして後ろを振り返った。

「隠れる必要などないのに。無意味なことだぞ。」

気まずそうな顔をして出てきたのは、ディルックだった。
彼自身は、別に話しを聞くつもりは無かったようだ。

なんとなく分かっていたのだろう。

鍾離がやばい人物だと言うことを。

「貴方が岩王帝君だと言うことを口外するつもりはない。」

「ほぅ……。」

「とりあえず、彼女と一緒に僕の屋敷に戻ると良い。まだ日の出には早い。」

彼の言葉に甘え、鍾離は柊朔を抱えて屋敷に入った。